そもそもなぜJ2降格したのか? 原因を分析・改善しなければ再降格がありえる(1)

KIND2008-09-26

 J1復帰が決まりました。監督・選手・スタッフ・フロントの皆さん、サポーターの皆さん、ともあれお疲れさまでした。

 自分たちのせいで参加することになった

 罰 ゲ ー ム 

 ですが、一度落ちたらなかなか上がってこれないチームも多数いる中、再び1年でのJ1復帰を決めたことはひとまず賞賛すべきことだと思います。

 今となれば、降格の責任を取らせてペトロビッチ監督を解任しなかったことが、結果的に「J1復帰のためには」重要だったといえるでしょう。ペトロビッチ監督を留任したことが、退団したウエズレイ、移籍した駒野友一を除くスタメン全選手の残留につながったことは間違いない。

 J2に落ちることでまず問題なのは選手の引き留めであり、実際2002年の降格時にもその問題はのしかかりました。その際は久保竜彦藤本主税という代表経験のある主力2選手が流出しましたが、逆にいえば「その程度の流血に抑えた」からこそ1年で昇格できた。そういう意味で、サンフレッチェ広島は2003年の事例からしっかり学んでいた。当時もすでに現場の実権を掌握していた小野剛コーチを監督に昇格させ、実質的に現場の体制を温存した。今回も、現場の体制を温存することで継続性を重視し、1年での、それもぶっちぎりでのJ1復帰につなげたわけです。そこをまずは評価しないとフェアではない。

 しかし、これはもう終わった話です。J1復帰は(100%ではないとはいえ)決まったこと。J2優勝も、例え全敗したとしても決まる公算が大きいし、さほど重要な目標ではありません。天皇杯についても同じ(これについてはまた別に書きます)。それより
圧倒的な重要なのは、「もう二度とJ2に落ちないこと」
 であることは明らかです。

 J2に落ちたことで、得たものはたくさんあります。今年に関しても、森崎和幸ボランチに、ストヤノフリベロに置き、1トップ2シャドーで前線からプレスを掛けることで中盤守備がずいぶん安定することが分かりました。昨シーズンは絶対的なレギュラーではなかった槙野智章高萩洋次郎が、今や攻守において欠かせない存在になりました。“出戻り"の森脇良太佐藤昭大がチームに刺激を与え、あるいは相次ぐGKの負傷を埋める存在になりました。五輪代表から落選したとはいえ、柏木陽介青山敏弘も精神的に一回り成長した感があります。絶対的なエースである佐藤寿人も、昨年のように「ウェズレイしか見ない」「ボールを追わない」というエゴを捨て、1トップという慣れない役割をこなし、チームプレイヤーとしてもキャプテンとしても成長しました。

 これらのことを無視するのは、フェアではありません。ただし、これらのことが本当に評価されるのは、「J1で通用してから」であることも間違いありません。逆に、この時点で喜んで思考を止める人は「J2で通用すれば構わない」と思っているわけで、それは問題です。サンフレッチェ広島Jリーグ開幕以来、13シーズンにわたってJ1でプレーしてきたクラブです。ステージ優勝1回、ゼロックス・スーパーカップ1回のタイトルを持っているクラブです。基準は当然J1に置くべきです。

 そして、再度書きますが、そういうクラブが再びJ2に戻ってくることは許されません。というか、この成績でJ1復帰しておきながら、またJ2に戻ってきてごらんなさい、


永 遠 に 笑 い も の 



 になりますから。

 選手の陣容、練習環境、予算規模、何をとってもサンフレッチェ広島はJ2では突出していました。

 選手の陣容では、J2他チームにはそもそも代表経験のない選手がほとんどでした。一方で広島は現役日本代表の佐藤寿、日本代表候補の柏木、元ブルガリア代表のストヤノフ、五輪代表候補だった青山、高萩、高柳一誠がいる。さらに元北朝鮮代表のリ・ハンジェ、2007年ワールドユース代表の槙野、アテネ五輪代表の森崎浩司アテネ五輪代表候補の森崎和幸もいる。年代別代表を加えれば、ほぼ全選手に代表経験があります。

 練習環境でも、サガン鳥栖プレハブのトレーニングルームを使い、仮設シャワーで汗を落としている。 一方で広島は天然芝2面、人工芝1面のピッチ、トレーニングルームに会議室も完備されたクラブハウス、さらに温水プールまで整備された吉田サッカー公園がある。

 予算規模にしても、2位モンテディオ山形公益法人という性格もあるとはいえ7億円に満たない。一方で広島は予算規模を23億円から25億円の間で推移しており、本谷社長によると現在は「30億円プロジェクト」を立ち上げクラブ予算を30億円に乗せるための取り組みを行っている。

 今年広島がぶっちぎりで優勝したのは、選手の質、選手層、練習環境のよさ、予算規模を考えれば


至 極 当 然 の 結 果


 と表現して差し支えないでしょう。もちろん、冒頭に挙げたようにそれなりの成果も挙げるには挙げました。が、これほどまでに客観的な物量において他チームに差がある中で圧倒的な勝利を収めたとしても、それがどこまで評価に値すべきか。僕は、「ノルマをクリアした」以上の評価をすべきではないと思います。

 広島は、J1にいなければならないクラブです。J1で上位を目指しつつ、J2に二度と降格しないチーム作りが求められる。そういう意味で2007年のチームははっきりと失格なのであり、2008年のチームはその尻拭いをきっちりやった。同じ監督同じ選手がやったことで文字通り「自分のケツを拭いた」わけです。

 我々サポーターが獲得すべき態度とは、「ご破算に願う」ことに他ならないでしょう。2007年の降格において、チームは致命的なダメージを受けかけた。駒野友一という、広島ユース時代から手塩にかけて育て上げ、2006年W杯にまで送り込んだ選手を手放した。20代前半の伸び盛りの選手が多い中で、貴重な1年をJ2というレベルの低いカテゴリーで費やさざるをえなくなった。営業努力によってスポンサー離れはなかったものの、本来的にはもっと多くのスポンサーが離れてもおかしくなかったわけです。

 もう二度と、J2に降格してはならない。そう思うなら、昇格を決めた今こそ、浮かれずに原因と結果を分析すべきでしょう。そもそも降格した要因は何か。2007年34試合で71失点を食らった原因は、この1年できちんと解消できたのか。来年のJ1で「同じ過ち」を繰り返さないメドは立っているのか。

 次回は、これらの点について、自分なりに思うことを書きます。今回はこのあたりで。