クボタツ復帰はオジサンのロマンである

 正式に決まったそうで。中国新聞紙面でも記事があったらしいが、まだネットにアップされていない。しゃあないのでニッカンから。

http://hiroshima.nikkansports.com/news/p-rn-tp1-20080123-310817.html
久保、広島復帰!1年でJ1導く
 横浜FCから戦力外通告を受けていた元日本代表FW久保竜彦(31)のJ2広島入りが22日、分かった。久保は地元のJ2福岡からオファーを受けたが、15日のトライアウトに参加。その後、古巣広島が正式オファーを出し、返事を待っていた。この日、広島の織田強化部長も久保本人からの入団の意思を確かめた。年俸2700万円(推定)で合意に達した。

 95年に広島に入団した久保は在籍8年でクラブ最多の67得点をマーク。その後は日本代表のエースと期待され、02年W杯日韓大会では直前まで招集されたが落選。06年W杯ドイツ大会でも落選した。横浜FCでの昨年は負傷に泣き、8試合1得点だった。02年終了後、J2降格決定とともに広島を去った男が、6年ぶりに復帰を決断。自身が開花した広島をJ1に導く。

[2008年1月23日10時56分 紙面から]

 嬉しいか嬉しくないかと問われれば、嬉しいに決まってる。クボタツが、また広島でプレーすることになるとは想像すらしたことがなかった。色々な意味で。「もう戻ってこないだろう」でもあったし、「このまま引退してしまうのでは」でもあった。横浜FCにおける状況を聞くに、岩本輝雄のように浪人になる可能性も十分あったし、久保がその状態でずっとモチベーションを保てるとは思えなかった。この「復帰」は、久保竜彦というサッカー選手の最後の輝きを見れるかもしれない、という意味でも喜ばしい。

 ただ、まあ過剰な期待はしないほうがいいだろう。

 久保復帰については以前少し触れたように、「腰の問題をケアできるならオッケー」という条件付賛成だった。聞くところでは、そうした体制がないことはないらしい。久保にとっても広島は縁の人々が多く、リハビリをしながら復帰するには最適の環境といえる。そして腰の状態が戻れば、久保は今でもJ最強FWの1人である。

 だが、現時点で久保は未確定な存在でしかない。昨年は8試合でわずか1得点で、残りはすべて治療に費やした。ここ数年まともにプレーできておらず、本領を発揮できたのはジーコ代表時代の2005年チェコ戦、アイスランド戦まで遡らねばならない。そういう選手を戦力に数えることは、現時点ではできない。結果がすべてのJ2において、そういうアバウトな補強が的確かといわれれば、イエスとはいえない。

 人気回復策という面からも疑問符がつく。久保のいた時代に観客動員が多かったのかといえばそんなことはなく、むしろ1試合平均はJ2から復帰した2004年以降のほうが多い。「ファンクラブ会員退会抑制」という意味なら分からなくもないが、その程度の意味合いでしかない、ということでもある。移籍金は発生していないのでコストは年俸のみだが、まあ「補強」と呼べるのかどうかは未確定といったところだろう。

 ぶっちゃけて言おう。クボタツ復帰は「補強」ではないのだ。「オジサンのロマン」である(笑)。かつてクボタツに魅せられた人々に、もう一度彼の勇姿を焼き付けるチャンスを与えたい。そうした意味での獲得である。そしてそういうロマンを否定する理由は、自分にはない(笑)。

 「現実的にみて〜〜」と言いたいのは分かる。たぶんそれは正しい。しかしだ、ここ数年のチームに最も足りなかったのは「ロマン」ではないのか? 「夢を見させてくれる」ような存在を、サンフレッチェは長らく持ち得なかった。まさにクボタツ移籍以降。そういう存在が、再び手元にある。それだけで、ワクワクできる。久保については、「いるだけで十分」だと思う。

 だからこそ、チームはちゃんとした「補強」を別枠でやる必要がある。幸い、外国人FWの話も進んでいるようだ。「補強」については、とりあえず心配はいらない。安心して、クボタツに「ロマン」を感じよう。うん。