『ミスト』は中学生にこそ見せるべき傑作(ネタバレなし)

 http://www.mistmovie.jp/

 映画としてのデキはともかく。これをR-15指定にするのは、率直にいってもったいないと思う。

 半分は冗談にしても(笑)これは教育映画ですよ、マジで。エンタメ映画の体裁をとった教育映画。
 いきなり理不尽な状況に置かれ、理不尽な死を迎える人間の姿。その理不尽な死を目撃する人間の姿。内憂外患の密室に置かれ、徐々に狂っていく、または本質が暴かれていく人間の姿。その中で輝く一筋の勇気と、それが無残に打ち砕かれる様。そしてあのラスト。

 比較する対象としては間違ってるかも知れませんが、最近見た映画でいうと、映像としての迫力は『クローバーフィールド』には到底及ばない。けれども、鑑賞後に残るものは、『ミスト』のほうがはるかに大きい。そういう映画ではないかと。

 もちろんグロテスクな表現が多々あり、それがR-15指定に繋がったのだとは理解できます。が、こうした理不尽さが人間社会の暗部であり、ある種の本質であることに疑いはない。だからこそ、この映画は、多感な中学生にこそ見せるべき映画ではないか、と半分本気で思っています。

 実際、本をちゃんと読む中学生は太宰も芥川も読むし、キングの原作だって読む。それらにR-15指定なんてついてないわけです。過度なアダルト表現には規制も必要でしょうが、『バイオハザード』にも劣るようなグロ表現にいちいち規制掛けて、こうした重要な示唆を含む映画から中学生を締め出すのは、どうかなーと思う次第です。まあ、民主党議員が極めて安易にゲーム規制に走ろうとする昨今ですから、その判断自体は理解できないこともないですが。

 ゲーム規制、児ポ法に絡む規制を見るにつけ思うのは、数字に基づいた話じゃないなということはもちろん、「実感としても理解できないな」ということ。僕の周囲には過激な表現を含む本、雑誌、ゲーム、映画を鑑賞する人間は大勢いたし、友人にはそっち系の(笑)フィギュアを集めているやつもいた。だけどそいつらの中から犯罪者は出てないわけですよ。理屈でいうとそいつらは犯罪者予備軍ってことになるのかもしれませんが、実際にはむしろカツアゲ被害によくあっていて、そういう意味では“犯罪被害者予備軍”でしかなかった(笑)。

 何にせよ、「格闘ゲームが犯罪に繋がっている」⇒「数字を寄越せ」、「美少女ゲームが性犯罪に繋がっている」⇒「数字を寄越せ」という姿勢で臨むのが良いのかと。結局「気持ち悪い」という主観でしか語っていないケースがほとんどなので。

 で、『ミスト』だ。いい映画です。まあウチの従兄弟は両方とも高校生、大学生なので、問題なく「見ろ!」と強制するとしよう。。。