浦和、阿部獲りの裏には?


 初のリーグ優勝の余韻も覚めやらぬ中、浦和絡みで興味深いニュースが報じられた。

http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20061209-OHT1T00009.htm
>浦和、阿部獲り アジア制覇へ大補強
>サッカーJ1覇者の浦和が、千葉の日本代表MF阿部勇樹(25)の獲得に乗り出していることが8日、明らかになった。浦和側はすでに千葉側に正式オファーを出している。「黄金の右足」と称されるFKの名手は、リーグ2連覇と来季初出場となるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を目指す赤い悪魔の最強の切り札となる。
(中略)
>阿部の推定年俸は5000万円で、Jリーグ規定による移籍金は3億円。昨季フェイエノールトから復帰した小野伸二に並びJ史上最高級の額となるが、浦和側は正式買い取りと複数年契約の条件も準備している。


 タイトルどおり、浦和が千葉の阿部勇樹「強奪」を目論んでいるという記事。推定年俸が正しければ、阿部の移籍金は3億円。この金額を提示されて断りきれるJクラブは、そうないのではなかろうか。阿部本人の意向をおいても、移籍の可能性はそれほど低くないように思われる。


 千葉にとっても、メリットとデメリットをトレードオフすればお釣りが来る可能性がある。それは、たびたび報じられてきた阿部の海外移籍に絡む話だ。


 今年10月、フランス二部のグルノーブルが阿部獲得を画策している、という噂がhttp://www.sanspo.com/soccer/top/st200610/st2006101000.htmlなどで報じられた。仮にこの話が事実だとし、さらに実現したとする。千葉にとっては「選手の希望を優先させたクラブ」という評価には繋がるだろうが、金銭的なメリットはないに等しい。いくら日本の携帯コンテンツ大手が買収したクラブとはいえ、国際舞台で実績もない選手に何億もの移籍金を支払うほど潤ってはいない。参考までに、大黒将志がG大阪からグルノーブルに移籍した際の移籍金はわずか2000万円だったといわれる。浦和が提示したとされる移籍金がいかに魅力的か、この例を考えても分かるだろう。


 それにしても、3億円という数字が事も無げに出る浦和の資金力は大したものだ。JFAで規定されている移籍係数は、移籍金の高騰を目的としたものではない。各チームの戦力均衡を保つためのものだ。海外移籍では二束三文の評価しかされないだろう阿部が3億円の値段をつけられるのは、制度的な要素による。


 一面では、「金で選手をむしりとる」醜悪な構図と見えるかもしれない。しかし浦和の資金源は、広告料収入と入場料収入に二分される極めて健全な経営の下で成り立っている。チェルシーオイルマネーにモノを言わせて選手を獲得するのとは、根本的に事情が異なる。「手前で稼いだ金を使って何が悪い!」ということである。(もっとも、千葉サポーターは「またしても」大切な存在を失いそうになり、引き止めに走らねばならなくなる。その構図はあまりに痛ましい)


 ただ、このニュースの裏には、浦和の「誰か」が近いうちに流出する可能性も読んでおきたい。中盤の底からCBまでをこなし、リベロとしてDFラインも統率できる阿部の存在は、田中マルクス闘莉王の相棒としても“代役”としても十分過ぎる。というより、ACLを睨んだとしても、やや過剰な戦力強化にも思える。つまり、「保険」である。


 3億円の保険をかけられるチーム、浦和。今季は、ほとんどのJクラブが単年赤字を計上することが予想されるという。実際横浜FMなどは、設備投資による緊縮財政のため、想定以上の高給選手に戦力外通告を出したと聞く。そんなJチームの情勢と、浦和のニュースはあまりに落差がある。JFAの戦力均衡策すら超越し始めている浦和は、少なくとも金銭的にはすでにビッグクラブと呼んで良いのかもしれない。

↓「面白い!」と感じたらクリックお願いします!↓

blogランキングへ投票する