来季の広島はどうなる?

森崎和の移籍はあるのか?


 すでに旧聞となったが、先週土曜に行われた福岡戦の勝利で、広島はJ1残留をほぼ手中に収めた。「ほぼ」というのは、確定ではないということ。とはいえ、その条件はかなり楽観視できる。広島が残り試合で「勝ち点1以下」で、「敗れる3試合はすべて大差負け」の上で、「福岡かC大阪のいずれかが4連勝」した時点で、入れ替え戦行きの可能性が出てくる。広島は次節の京都戦含め残り4試合で勝ち点3をとればJ1残留が確定する。ほぼ、といったが、90%以上残留は決まったものと考えて良い。むろん暢気な観客である僕は、だが。


 そうなると、気の早い話だが、来シーズンの心配をしたくなるのが人情というもの。そして、ここからは予断と憶測のオンパレードになる。まず、僕は森崎和幸が移籍する可能性がある、と踏んでいるのだ。



 広島ユースから育った生え抜きの、看板ともいえる選手を放出する。チームにとっては、リスクの高い行為である。しかしチーム事情と選手の事情が合致しないという状況があり、来シーズン以降もそれが「改善」されない可能性が高いとすれば、ありえない話ではない。


 森崎和幸は本来ボランチの選手だが、ミハイロ・ペトロビッチ監督が就任した第13節名古屋戦以降はすべて3バックの右CBとして起用されている。この起用は、CBが少ないというチーム事情もあるが、それ以上に後ろからのビルドアップを重視するペトロビッチ監督の意図によるものだ。


 森崎和が見せるパフォーマンスは、総合すると及第点以上と言っていい。本職のDFではやらかさないマークミスやヘディング技術の拙さはあり、試合によってはスピードのあるFWに翻弄されるケースもあった。


 一方でボールを持てばめったに失わず、確実に一つ前の味方に展開することができた。森崎和がCBから中盤に持ち上がることで数的優位ができ、相手のボランチを引き付けることができる。裏のスペースをケアすべき選手が引っ張り出されることで、ウェズレイ佐藤寿人が狙う「美味しいスペース」ができる。駒野との連携でうまくサイドを崩せればビッグチャンスに繋がりやすいのは、ゴール前をカバーする相手の人数を減らしているからだ。そういった意味で、森崎和は今やチームに欠かせない戦力である。ただし、右CBとして。

広島の中盤の現況


 森崎和の本職である中盤は、現在逆三角形型の1ボランチを採用している。1ボランチを務めるのは、進境著しい五輪代表候補の青山敏弘。森崎和のように緻密なショートパスを繋げ、森崎和以上にダイナミックなサイドチェンジを見せ、強烈なミドルシュートを持ち、大胆な動きで相手ゴール前まで侵入し決定機に絡む。その戦術眼と確かな技術、激しいアップダウンでも衰えない運動量は、レギュラーの座に相応しい。


 2枚置かれた攻撃的MFを務めるのは、左MFに森崎浩司、右MFに柏木陽介。両選手については、特に説明不要だろう。森崎浩司は兄よりも前目で仕事をこなすが、特にペナルティエリア付近で抜群のシュート精度を誇る。足の振り抜きがコンパクトで早く、キックの技術が高い。ただ飛び込むだけでなく、一歩ためてスペースを作ってから走りこむ、といった状況判断も的確にできるようになった。


 だが、現在森崎浩の仕事は柏木と青山のサポートである。柏木はアジアユースで見せているように高い技術と運動量を誇る選手。技術系にも関わらずハードワークをこなせる、オシムが好みそうなタイプの選手だ。ただ、まだ1試合における波が大きく、1プレーの失敗で如実にプレーの精度を欠いたり、その逆をやったりする。アジアユースで彼を初めて観た諸兄は信じられないかもしれないが、彼はシュートへの自信がない。第24節の大宮戦など、シュートを撃てる場面で躊躇した挙句、クルリと相手に背を向けて一回転し、さらにドリブルを続けて奪われたりした。そのシーンを見た僕は「柏木ルーレット」と名づけ、彼のヘナチョコぶりの象徴としている。


 柏木ほどではないが、青山もまだプレーが完全に安定しているとはいえない。森崎浩はそういう2選手のサポート役として、両選手が上がった穴を埋めやすいポジショニングを心がけ、奪われた場合は即座にアタックへいける体勢を整えている。この3人の循環は、現在非常に良い。ペトロビッチ監督は、年代代表の招集など特段の事情がない限りこの3人と中盤の形を固定している。控えには北朝鮮代表の李漢宰高柳一誠(負傷で離脱)、中里浩司らがいるが、森崎浩・柏木・青山以上のパフォーマンスを見せた選手はまだいない。

来シーズンの布陣展望


 本職がボランチである森崎和が置かれている状況は、こういうものである。この状況では、森崎和は右CB以外にポジションはない。しかしここに来て、事態をより複雑化させそうな懸案事項がある。戸田和幸の去就と、郄萩洋次郎(愛媛)の復帰だ。


 東京Vから期限付き移籍中の戸田は、現在3バックのリベロを務める、チームに欠かせない存在。しかし、自身のHPで広島への不満を述べることがたびたびある。その中でも、主に吉田サッカー公園という練習環境の遠さへの言及は多い。さらに、戸田は現在のポジションがベストと考えているかどうか、日本代表復帰を狙うに広島というチームがベストなのかどうか、常に考えているはず。


 戸田の契約期間は1年であり、一旦は東京Vに復帰することとなる。来季、戸田が広島に残るケースは「レンタル契約の延長」か「完全移籍」のいずれか。しかし広島は、昨シーズン佐藤寿人に1億6千万円を払い、今シーズンにはウェズレイを獲得しながら低迷し、観客動員が昨年よりダウンしている。戸田の保有権を買い取る余裕があるとは思えない。かといって、2年連続でレンタルという中途半端なポジションを戸田が受け入れるとも思えない。戸田が放出される可能性は、かなり高いとみていい。


 戸田が放出となると、どういう変化が生まれるか。端的に言えば、リベロを森崎和が務めるか、4バックで臨むか、である。前者の場合、すでに戸田が出場停止となった第14節千葉戦、第15節甲府戦で試され、いずれの試合でも芳しいパフォーマンスを示せなかった。戸田が抜ければ、現状で同じ水準のプレーヤーを探すことは難しい。布陣変更の可能性は、高い。


 その場合、新外国人として4バックのCBを務められる選手を置き、盛田あるいはダバツと組ませる方法がある。図解すると、こうなる。


−−−−−佐藤寿人−−−−ウェズレイ−−−−
−−−−森崎浩司−−−−−−柏木陽介−−−−
−−−−−−青山敏弘−−−???−−−−−−
−−服部公太−−−−−−−−−−−−駒野友一
−−−−−−−−ダバツ−−新外国人−−−−−
−−−−−−−−−下田崇−−−−−−−−−−


 この布陣になった場合、???の位置に誰が入るのか。森崎和が第一候補、と考えたいが、これまでの起用法を考えるとそうではない可能性も高い。8月7日のU-21中国戦で負傷した青山が、第17節と第18節を欠場した。その代役を務めたのは森崎和でなく、中里であり、高柳であった。中里には右CBでの出場経験があるが、ペトロビッチ監督はあくまで森崎和を右CBに置くことにこだわったのだ。ペトロビッチ監督が森崎和に求めるのは、「後方からのビルドアップ」それ一本である可能性は高い。


 ここで、郄萩洋次郎の名前は浮上する。JFLからの昇格初年度にも関わらず、現時点でJ2の9位につける愛媛で、郄萩は中核的な役割を果たしている。ダイナミックな展開でチームにスピードを与え、ボールを動かし、中盤を活性化させている。チームで2番目に多い43試合に出場し、レギュラーの座を不動のものとしている。線の細さはまだあるが、相手から奪い取る守備もある程度でき、何より90分間常に走り続ける体力がある。すでに、来シーズンのチーム復帰が内定。ペトロビッチ監督の信用を得れば、レギュラー獲得の可能性もあるだろう。


 戸田の放出と、郄萩の台頭。この2つが重なったとき、森崎和がポジションを失う可能性が出てくる。机上論というには、やや濃い現実味を帯びて。来シーズンに向けた展望は当然森崎和自身も持っている。そして、同様の事を考えているはずだ。「来シーズン、自分にポジションがあるのか?」と。


 何度も書くが、これは予断と憶測である。それを断った上で、僕は森崎和の移籍はありえないことではない、と思っている。今から、心の準備だけはしておこうと思う。

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