サッカーは逃げていかない


 サンフレッチェ広島に関して、2つのニュースが発表された。

ベット選手の処分について
このたび、サンフレッチェ広島所属のジョベルト・アラウジョ・マルチンス(Joubert Araujo Martins/登録名:ベット)選手が起こしました傷害事件につきましては、被害者の方に多大なるご迷惑をお掛けいたしましたことを、心よりお詫び申し上げます。


 また、サンフレッチェ広島にご声援いただいているサポーター・ファンの皆様、ご支援いただいている株主・スポンサー様をはじめ、多くの関係者の皆様に対して、ご迷惑とご心配をお掛けし、お騒がせいたしましたことを深くお詫び申し上げます。


 ベット選手本人が傷害事件を起こしたという事実は、Jリーグをはじめ、サッカーに関わっておられる皆様方、またサッカー界の社会的立場を著しく毀損し、青少年育成の観点から見ても容認できることではございません。


 当クラブとしましては、今回の事態を厳粛に受け止め、以下の処分を行うことを決定いたしました。


 今後、危機管理に対する姿勢を正し、選手教育の強化のみならず、社員教育の強化について再度徹底し、再発防止へ向け全社を揚げて取り組んでまいります。


【処分内容】
・ジョベルト・アラウジョ・マルチンス(登録名:ベット)選手との選手契約解除
代表取締役社長、および常勤取締役6名に対し、減俸 5% 1ヶ月


 非常に残念だ。彼のきさくな人柄を知るだけに、「本当に悪いこと」をやったとは今でも思っていない。けれども、結果的に被害届けを出され(後に取り下げられた)、刑事告訴された時点で、それはもう犯罪ということになってしまう。クラブとしては、こうするしかない。


 と同時に、何らかの内部処分が出ることも当然だろう。あとは、これを受けてJリーグがどういう対応をするのか。


 もう一つは、非常に救われる話。

サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン「紫熊倶楽部」HPより
吉弘、チーム練習に合流
 7月1日、C大阪との練習試合中に相手選手と激突し、中心性頸髄損傷の大けがを負った吉弘充志選手が、今日、3ヶ月ぶりに練習に完全合流。11対12のミニゲームにも元気に参加した。また、肩の負傷で戦列を離れていた大木勉選手も、練習に合流している。

 使い古されている格言があるが、あえてイビチャ・オシムの言葉を援用させてもらう。


 「私にとって、サッカーは人生そのものだ。人生からは逃げられない」


 僕はそこに、こう補足したいと思う。
サッカーは逃げていかない」、と。


 もはや、ベットは十分に社会的制裁を受けた。だから、もうエールを送っていいころだ。だって、彼は僕の愛するサンフレッチェ広島の一部だったんだから。


 ベット、君はもう日本でプロサッカー選手としてキャリアを積むことはできないだろう。だけど、君にとってサッカーは人生だったはず。人生からは逃げられない。サッカーは逃げていかない。今後、君が帰国した後も人生は続くし、サッカーは続く。人生って、そんなに悪いものじゃないんだよ、きっと。丸いボールが転がっていく限り、また地球のどこかで会えるさ。


 そして吉弘充志へ。よく戻ってきた。中心性頸髄損傷(ちゅうしんせいけいついそんしょう)というのは、上半身へ障害が残る危険がある重大な負傷だ。サッカー選手生命どころか、今後の人生を左右しかねない負傷だ。その負傷に立ち向かい、真剣にリハビリをこなし、こんなにも早く僕らの元へ戻ってきてくれた。君のように真摯に人生に向き合った人間から、「サッカーは逃げていかなかった」。人生って、そんなに悪いものじゃないんだよ、きっと。僕は本当にうれしい。


 ジョベルト・アラウジョ・マルチンス、そして吉弘充志の今後に幸多からんことを。

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