J1第25節千葉vs.大分 分析(上)


オシムサッカーは「状況へのリアクション」


 ガーナ戦当日ですが、空気を読まないで表題の試合分析をします。が、これもちゃんと日本代表への注文へ繋がったり、繋がらなかったり。なんで、まあ呆れないで読んでくださいませ。


 まずは余談というか、こちらも本題にしたいぐらいの話から。いつも楽しく読んでいるdorogubaさんのコラムで「オシムが代表でやりたいサッカーって「リアクションサッカー」なんでしょうか?」というコメントがあって、唸った。というのは、オシムはいつも「相手があってサッカーがある」とコメントしていて、実際にこれまで相手と状況に応じての選手起用だと感じる部分もあった(そう思わない部分も多かったけど……)ので。


 オシムのサッカーは前からプレッシングに行くし、「相手FWが1枚なら3バックは1人上がれ」とか言うので「攻撃的」と見られがちだけども、実際オシムにしていれば「状況に応じて上がれ」と言っているだけ。なので、攻撃的でも守備的でもなく、「状況的」なプレーとでも言えるのでしょう。


 で、こちらの記事ですが、相手に合わせて例え9−0−1にしたとしても、それは相手がピンピンして裏のスペース与えたら一気にシュートまで持っていかれる状況だったらの話で。実際は時差ボケでクラクラなら、一気に「2−4−4にしろ」とか言うかも知れません(笑)。実際、会見ではこうコメントしてますしね。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/200610/at00010809.html
 もし相手が2トップで来ることがはっきりしていたら、その場合は阿部をリベロに起用して、その前に水本を含む2人をストッパーに置くことを考えている。2ストッパー、プラス阿部で試合が始まるとして、ところが相手が1トップで来た。その場合、2ストッパーはどうするのか。つまり試合開始から、攻めに加わる選手が1人足りない、そういう状況になるわけだ。


 オシムの言うリアクションというのは、これまでの発言を収束すれば「状況へのリアクション」なのだと思います。だから、結局は相手の枚数に応じてDFを上げる、これまでと同じ試合になる気がします。デイリーさんは相変わらず見出しの印象操作が上手いなあ。


 何にしても、ガーナ戦楽しみですね。中村憲剛使って欲しいなあ。


●ハイレベルなこう着


 さて、千葉vs.大分の試合レポートです。試合データに関しては公式記録を参照のこと。


 前半は、試合そのものに大きな動きはなかった。大きな理由は、両チームがまったく同じ陣形・システムをとり、大分が幾分スペースへ戻る意識が高かったからだ。


 両チームとも3−5−2のダブルボランチ(ジェフはクルプニコビッチ坂本將貴が入れ替わりながらトップに上がる)。マンマークスタイルで、2ストッパーが2トップにつき1人が余る。FWはそれぞれがポストタイプと衛星タイプで、ポストにクサビを入れてからギュン、とスピードアップする。スタイルは完全に噛み合っている。ということは、お互いやりたいことが分かるから、つぶすポイントを心得ている。マークを引き離そうにも、味方のフォローするところにも相手がいる。だから、なかなかフリーになれない。当然の帰結として、試合はこう着した。


 しかしこれは、非常にハイレベルなこう着といえる。スポーツにおけるこう着状態は2種類あって、1つは単に動きの少ない試合。もう1つはお互いに機先を制しあい、「動けない」試合だ。この試合は明らかに後者である。スポーツにおける美しさの一つが感じられるのは、こういう試合だ。


 ただ、こう着はこう着。打ち破らなければ、失点しない代わりに得点も入らない。こうなると、ホームのジェフにとっては都合が悪い。大分が素早くリトリートすることもあり、必然的に構図は「スキを見せない大分」と「スキを見破ろうとするジェフ」となった。


ブレークポイント


 こう着状態を打ち破る方法は幾つかある。相手のミスを突くこと、セットプレーを生かすこと、積極的なミドルシュート、自らバランスを崩すこと(味方のカバーを信じて縦に走り抜けること)、そして1対1の局面に勝つこと。特に後者の2つに関しては「ブレークポイントを作る」という考え。そして試合は、実際にそれらのセオリーをなぞる形でチャンスが生まれた。


 相手のミスを生かし、まずは大分がシュートを放つ。5分、中盤のつぶしあいがあった後、一瞬マークが空いた根本裕一が、左サイドに流れる動きをした松橋章太に鋭い縦パス。これを松橋がワンタッチで落とし、最後は梅崎が右足で叩いたがヒットしきれず、ボールは左ポストの外をバウンドしながら通過した。


 一方ジェフは、1対1を制してチャンスを作った。14分、右サイドで根本をかわした水野晃樹がドリブルで持ち上がり、坂本將貴クルプニコビッチとつないで最後はクルプニコビッチがシュートを放った。(これは余談だが、水野と根本が1対1になった際、大分のカバーリングに誰も入らないシーンが何度かあった。これも「ブレークポイントの作り方」の一つなのかもしれない)


 また、セットプレーでも先にチャンスを作ったのはジェフだ。24分、ゴール正面やや右で得たFKを、クルプニコビッチが左足で巻いてGKに向かうボールを蹴る。このボールがうまくカーブを描いて、中央に走り込んだ巻誠一郎の頭へ。しかし一瞬阿部勇樹とポジションが重なったため巻はうまくヒットすることができず、ボールは巻の頭をかすめて左ポストの脇を通過した。


 32分、今度はジェフのミスからチャンスが生まれる。ジェフのDF水本裕貴が左サイドに開いてボールを受けるが、中央の阿部に戻したパスはなんと直接高松大樹に渡ってしまう。これにより前を向いた高松はドリブルで持ち上がり、寄せてくる2人のDFからプレッシャーを受ける前に、ミドルシュートを放った。


 直後の33分、ジェフはゴール前で見事な連携を見せる。水野がバックパスで戻したボールを阿部、クルプニコビッチ、巻とダイレクトパスでつなぎ、最後は走りこんだ佐藤勇人がシュートを放つが、これは弱くGKにキャッチされる。


 前半に関して言えば、大分が「意図的なこう着」を狙い、ジェフが「こう着を打破するレシピ」を見せていくような状態だった。今節行われたJ1の中でも、最もレベルの高いせめぎあいといえた。


後半はこちら


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