システム論が根ざしていない日本

 いつも楽しく購読させて頂いてる「缶 詰 に し ん」さんが、また興味深いエントリーをお書きになっている。内容は高円宮杯におけるシステム論なのだけど、僕は内容の本筋から外れたにしんさんの「ポロリと漏らした本音」らしきモノが非常に気になった。

http://blog.drecom.jp/soratobi/archive/1142
日本人はシステム論がお好きというけれど
現実にはそれは表層だけの話で、しっかりゲームに根ざしたシステム論が
充分に語られているとは思えないし、それもだいたい
欧州システム論の援用だったりして、日本のサッカーでどうなのか
って言うことが図られていない気がしています。


 これ、とっても同感です。


 正直、ネット上でも紙媒体でも、「システム論」と書かれるとそれだけで嫌悪感があります。特に日本人ライターが書くシステム論はほとんどが一方のチームの「並び」しか書いていない。並びとシステムの違いを分かっていない。恐らく、そんな書き手の中では個人戦術とグループ戦術とチーム戦術の違いも区別されていないでしょう。で、その手の書き手の殆どが援用しているのが「欧州のトレンド」です。「だから何なの?」としかコメントしようがないんですよね、その手の論調には。



 なぜかというと、まず「ゲームを十分に分析できていない」からです。例をとるのはアレなので例示はしませんが、多いのは「相手のフォーメーションを書かない」「相手の作戦を書かない」「自分たちだけのシステムしか書かない」。相手がどういう配置になっていて、それは何を意図としていて、実際のボールの動かし方とそれに準じた選手の動きはこうで、選手はどこでルックアップしてどこで首を振って、結果どういう意図を持っているのかを推測して……とそこまでやって「試合分析」「システム分析」といえるのだと思う。これは、並大抵のことではない。
 
「4バックだから3バックよりサイドに人数が多い」のはホワイトボードに並べたときは確かにそう。「だから3バックの両サイドを突ける」のではない。現実に4バックのチームがワイドに人数を掛けたからなのか、3バックのチームが両サイドを高く張らせていたからなのか、あるいは4バックのチームはフラットにしているものの低めに押さえ、FWの一角がサイドに張ってもう1人がセンターに張り、そのフォローにセンターハーフが飛び出す形なのかもしれない。


 にしんさんが仰るようなシステム論に、僕が近づけている自信はないのだけれど、少なくとも僕にとって「ゲームに根ざしたシステム論」とは、「実際の運用方法を含めたシステム論」のことだと思います。


 オシムが語るように、僕も「数あるシステムそれ自体を語ることにどんな意味があるのか」と思っています。できる限り、「ゲームに根ざしたシステム論」を心がけ、分析をしていこうと思います。


 ただ、これホント大変ですよね(笑)。22人というわけではないけど、状況によっては攻守合わせて7人ぐらいの動きを同時に見て、それぞれの動きの意図を把握して、お互いの「システム」がどう機能しているか、あるいはどう破られているかを把握しなきゃいけないわけですから。90分みっちりゲームを分析するとそれだけでドッと疲れるし、ビデオだと巻戻しができるから何度もやって結局4時間も5時間もかかってしまうことだってある。そのメモをまとめて文章に起こして、読みやすい形に整形して……とやると、一本まともな(自分レベルで、ね)分析を書こうと思ったら、10時間は見ないとダメなのかも。

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