J1第24節広島vs大宮(1○0)(上)

http://www.j-league.or.jp/SS/jpn/j1f/200601000124105_W0201_J.html
森崎浩、千金ゴール(中国新聞サンフレ情報)
広島 vs 大宮:ペトロヴィッチ監督(広島)記者会見コメント(J's GOAL )
広島 vs 大宮:三浦俊也監督(大宮)記者会見コメント (J's GOAL )
広島 vs 大宮:試合終了後の各選手コメント

-<総評>
 15位広島が、残留争いに向けて大きな勝ち点3を挙げた。

 大宮の自滅か、それとも広島の諦めないメンタリティがつかんだ勝利か。答えは、どちらのサイドに立つかによって大きく異なるだろう。

 前節浦和戦の敗戦によって16位京都に勝ち点差5に詰め寄られた広島にとって、内容よりも結果が重要なのは言うまでもない。まして広島は、ホームでまだ2勝しか挙げていない。広島にとってのホーム戦勝利は、観客を味方につける意味で極めて大きな意味を持つ。一方で、客観的に見れば大宮が得点機を逃し続け、広島の息の根を止められなかっただけの試合ともいえる。

-<前半>
 大宮は、この試合でも4−4−2フラットを敷いてきた。ただ、バランスはやや異なる。4バックはそれほど高い位置まで押し上げてFWとの距離を詰めず、代わりに中盤の片岡洋介斉藤雅人小林大悟久永辰徳、FWの吉原宏太桜井直人の6人はほぼ一つのブロックを作り、広島の右サイドに強烈なプレスを掛けた。理由は、広島の日本代表右サイドバック駒野友一を警戒するから、だけではない。より重要なのは、ボールを奪った際に吉原と広島の右CB森崎和幸を1対1にすることである
 
 このシフトには、様々な効果があった。まず、広島の生命線であるDFラインからのビルドアップをつぶすこと。右サイド寄りにブロックを作ることで、3バック1ボランチの広島に対しほぼ4人、数的同数の選手がプレスを掛ける。そして、広島の狙いである森崎和幸から駒野への展開、FWへのクサビパスを封じ、広島の右サイドに緊密なゾーンを敷いてボールを奪うのである。
 
 しかし、真の狙いは「森崎和幸殺し」である。スピードのある吉原を常に森崎和のサイドにつけ、ボールを奪った瞬間に縦パスでいつでも抜け出せるポジショニングを取らせた。森崎和は元々本職のDFでなく、スピードにもそれほど優れるわけではない。大宮は思い切った押し上げができない森崎和を広島のウィークポイントと見定め、「殺し」にきたわけである。
 
 このシフトが、前半は完璧にはまる。広島は1ボランチへの青山、右MF柏木陽介、FWウェズレイへのパスコースも限定され、右サイドが完全に「窒息」した状態になった。大宮はDFラインと中盤の間に距離があり、バイタルエリアにはスペースがあった。だが寄せが早いため広島はこのスペースを使うスキを与えられず、またDFラインは2トップへのマークを常に心がけていたため、縦パスはことごとくはじき返される。2トップは半ば孤立した状態に追い込まれた
 
 この状況に輪を掛けたのは、広島が右サイドの攻撃にこだわったことだった。大宮は「プレッシング・ブロック」6名と「ディフェンス・ブロック」4人ともいうべき、ほとんど2つにチームを分けてきた。一方でダバツ服部公太の左サイドは、右サイドに比べればやや手薄になっていた。だが、広島はあくまで分厚い網のある右サイドにこだわり、ショートパスで崩そうとしたのである。
 
 その理由は、推測になるが、左CBダバツと左サイドハーフ服部公太の信頼関係が薄いことだろう。ダバツは、ボールを持つとすぐに裏へ放り込むクセがある。服部へ簡単に預けてサポートすれば、左サイドを崩す手もありえた。だが、ダバツはあくまで裏へのパスにこだわり、結果相手GKに直接ボールを渡るロングボールさえあった。この左サイドの連携の薄さまでも計算に入れていたとすれば、大宮・三浦俊也監督のスカウティングは相当綿密に行われている。
 
 また、広島がウェズレイを2トップに張らせ続けたことも、苦戦に拍車を掛けた。基点が作れない以上、唯一ボールキープできるウェズレイを中盤に下げるのは一つの手。ウェズレイを中盤に下げてボールを落ち着け、相手のDFラインを押し下げ、ペースを握り返すことを考えるべきだった。
 
 大宮の「右サイド殺し」に加え、広島の工夫のなさも手伝い、試合は大宮が一方的にチャンスを量産した。具体的なシーンは覚えていないが、少なくとも大宮にはセットプレー含め4度の決定機があったと思う。それは、すべてGK下田との1対1である。このうち1つでも決めていれば、大宮は大差をつけて前半を折り返すことも可能だった。それが実現できなかったところに、4試合勝ち星のない大宮の詰めの甘さが見え隠れする。
 
 広島は、大宮の甘さに命拾いをした格好で前半を終えた。

               <後半へ続く>

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