イエメン戦雑感

 至る所で土が露出する劣悪なピッチコンディション。酸素の薄い、標高2300メートルの試合会場。日本は、灼熱のサウジアラビアから移動してきたばかりで、新監督就任後まだ4戦目。これだけの条件がそろった中で結果を残したことは、評価されていいはず。
 
 日本だけの問題かどうかは分からないが、内容が良くても負ければ批判され、結果を残しても「内容が悪い」と批判されることが多い。伝え手側が圧倒的に有利な構図である。どんな試合をやろうと批判することは可能で(ex.zakzak久保)、だからこそ例えば“予選は結果が全て”という態度を決めておくことが誠実さにつながる。そして自分は、予選は結果がすべてだと思うので、内容についての批判はとりあえず行わない。

 良いと思った点は、サイドチェンジを織り交ぜて崩す形を幾つか作れたこと。前半20分過ぎまではピッチコンディションに苦しみ、なかなかアイデアのある攻撃ができなかった。しかし前半24分過ぎに阿部のサイドチェンジを左サイドの羽生が受け、中央に折り返して遠藤に渡ったシーンあたりから、日本は意識的に一方のサイドで作って逆サイドに展開するようになった。

 ここからイエメンのDFは徐々に日本の選手を捕まえきれなくなり、2分後には羽生のサイドチェンジをファーサイドの遠藤が受けるシーン、前半31分には加地⇒田中達とつないで最後は巻がファーポストでフリーになってヘディングシュートを放った。前回のイエメン戦に続く課題は、ある程度消化できていると言っていい。もっとも“ある程度”であって、局面局面でイマイチなシーンはあるが。

 逆に物足りないと思った箇所は、やはりフィニッシュ。後半26分の遠藤ドリブルからパス⇒巻スルー⇒寿人折り返して遠藤がGKと1対1になったシーン、あるいは後半39分、寿人のクロスを中央の我那覇がフリーでヘディングしたシーンを見ても、日本は3-0、4-0とできるチャンスがあった。そういう部分を決めていかないと、格下に「格」を見せ付けることはできない。

 オシム監督の采配にも疑問がある。後半開始から田中達を下げて佐藤寿を投入したけど、これでドリブルで打開できる選手がいなくなった。佐藤寿は左サイドに張って何度かチャンスに絡んだが、佐藤寿は自分で展開するタイプの選手ではない。必然、攻撃のパターンは減り、全体の運動量が目に見えて落ちた後半30分過ぎから日本はパワープレー一辺倒となり、攻撃に変化を付けられなくなった。
 
 達也の出場時間数は、日本でのイエメン戦から徐々に減っている。これは結果を残せない達也に対するメッセージだったのかもしれない。それでも、前半の達也は十分に効果的なプレーが出来ていた。スタミナが切れたのか、アクシデントがあったのかもしれないが、効果的な交代策でなかったことは事実だと思う。
 
 もっとも、これは批判と言うほどのものではない。これほど特殊なケースはまれなのだし、「次につなげる」ことができたという事実だけで良しとすべきなのでは。

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イエメン もうひとつのアラビア (アジアを見る眼)