「終わってみれば順当」な入れ替え戦・第二戦雑感

 仙台の粘りは感動的だった。だが、反撃するにはあまりに遅すぎた。

 第一戦で仕留めるチャンスを逃し、致命的なアウェーゴールを与えたことが、結果的に昇格を逃す大きな要因となった。そもそも、今シーズンの仙台は2位を獲得するチャンスが十分にあった。J2では広島が独走したが、2位以下はほとんどダンゴ状態だった。3位という順位は喜ぶべきだったろうが、17引き分け(リーグ2位)という結果を見れば「詰めの甘さゆえ、2位を逃した」ともいえた。

 そういう意味で、仙台にとってはある意味象徴的な結果に終わった。「不運」とするには、人為的な部分が多すぎる。よって結論は、タイトルのようなものになる。「終わってみれば、順当」。

http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00075243.html
12月13日(土) 2008 J1・J2入れ替え戦
磐田 2 - 1 仙台 (16:04/ヤマハ/16,693人)
得点者:41' 松浦拓弥(磐田)、70' 松浦拓弥(磐田)、89' 梁勇基(仙台)

 第一戦の試合内容では、仙台が上回っていたように思う。磐田は動きが固く、必要以上に失点を警戒したことで攻撃に怖さがなくなった。一方、仙台はホームの大声援を背に関口、中島らが鋭く裏を突いて相手DFをサイドに引っ張り出し、できたスペースをナジソンやリャンが狙った。先制点こそナジソンの個人能力がモノを言ったが、試合の流れからすれば順当といえるものだった。

 それだけに、仙台はアウェーゴールを与えたこと、もちろん引き分けたことが致命的だった。松浦の技巧的なミドルシュートで追いついた磐田は完全に息を吹き返し、後半はむしろ優勢に進めた。格上の磐田が「ホームで」「0-0でも勝ち抜け」というアドバンテージを手にした一方、格下の仙台は「1点獲らなければ負ける」という状況に追い込まれた。小さいようでいて、この差は仙台の選択肢を狭めるという意味で大きな影響を及ぼした。

 しかも第二戦の磐田は、見違えるほど動きが良くなっていた。出足の鋭さではほぼ互角、球際でも粘りに粘り、素早くフォローした選手が何度も仙台からボールを奪ってカウンターにつなげた。

 中央がしっかりクリンチするので、当然ながらサイドが空き始める。そして、第一戦でほとんど本領発揮できなかった駒野友一村井慎二という代表・元代表のサイドプレーヤーが生き始めた。前半の途中からメモを取らずに見ていたので分からないが、磐田は運動量で仙台を明らかに上回っていたように思う。

 そうなると、個人能力の高い磐田が優位に立つのは自明の理。前半41分、磐田のProdigy松浦拓弥が3人をかわして中央突破し、左サイドに開いた前田遼一にパス。前田はトラップをミスしたものの、詰めてきたDF2人の間を通すクロスを上げると、これを松浦が「胸で」プレーし、仙台GK林卓人の頭上を抜いた。中途半端な高さにきたボールを瞬時に「胸で」「シュートする」と決断した判断力の高さに舌を巻く。

 追い込まれた仙台に対し、磐田は伸び伸びとプレーする。前田、ジウシーニョの2トップが仙台DFラインをかく乱し、ロドリゴ・犬塚のボランヂコンビはシンプルにサイドに展開し、駒野・村井の両サイドは何度もサイドを深くえぐった。得点が欲しい仙台が、自陣にくぎ付けにされる展開が続いた。

 それでも仙台はチャンスの芽を作りかけた。だが後半25分、仙台のCKからこぼれたボールを拾った駒野が、恐らくはクリアでなくロングパス。前線でDFと一対一になっていた松浦を見逃さなかった。受けた松浦はスピードに乗り、DFを左足の切り返しで外し、そのリズムのまま飛び出してきたGK林の肩口をフワリと抜く右足シュートで2点目を奪った。試合は事実上ここで決した。

 繰り返すが、ロスタイムにおける仙台の粘りは素晴らしかった。あれほどプレッシャーが掛かる場面で見事なFKを決めたリャン・ヨンギの集中力は、驚嘆すべきものだった。

 そしてその直後に、仙台MF関口訓充の右足クロスを磐田GK川口が判断ミス、触れなかったボールがリャンの前にこぼれた。エリア内にボールがある状態で、ゴールがガラ空きになる絶好機。人知を超えた力が、仙台に最後のチャンスを与えた。ように見えた。

 しかしシュートコースをふさがれたリャンは横パス、飛びこんだ選手が放ったシュートはDFのブロックにあい、さらに放ったシュートは川口に止められCKとなった。結局、そのCKがこぼれたところで試合終了のホイッスルが鳴った。

 これも繰り返しになるが、仙台は結局のところチャンスを逃し続けた。磐田もチャンスを逃したが、仙台より1点だけ多く決めた。その差が、来シーズンの両者をJ1とJ2に分けた。

 僅差ではあったが、コンペティティブな試合を分けるのはいつもほんの少しの差だ。そういう意味で、この試合は「順当な結果」と言っておきたい。来シーズンの仙台が、「順当に」勝ち上がることを期待するために。