前田俊介、大分に完全移籍へ

 タイトルのような記事が出た。記事そのものの信憑性は定かではないが、移籍直前における広島でのプレー内容、現在の広島が目指すサッカー、現有戦力との比較で考えれば、きわめて予想できた話ではある。

http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/64707
前田と森島 完全移籍へ 大分トリニータ

 J1大分が、期限付き移籍で来ているFW前田俊介(22)とFW森島康仁(21)を完全移籍で獲得する方針であることが9日、分かった。2人とも今季、ナビスコ杯やリーグ戦で活躍した伸び盛りのストライカー。戦力維持をはかり、悲願のJリーグ制覇を狙う。

 前田は昨年5月に当時J1の広島から期限付きで移籍。昨季は残留争いが佳境にさしかかっていた11月の大宮戦で決勝ゴール、今季もナビスコ杯のFC東京との準々決勝第1試合で先制点を決めるなど、要所で活躍してきた。「デカモリシ」の愛称で知られる元U−20日本代表の森島は、右足首のけがが長引いていたFW高松の代わりとして今年7月にC大阪から獲得。186センチの長身を生かし、リーグ戦15試合で2ゴールを挙げた。

 広島の前線における戦力は佐藤寿人柏木陽介高萩洋次郎森崎浩司平繁龍一久保竜彦など。負傷によるブランクのあった久保を除けば、全員が前線からサボらずにプレッシャーを掛ける。

 確固たる守備戦術を持たないチームではあるが、前線の3人には相手DFラインおよびボランチを追い回す指示が出ており、それをきっちりこなさないことには3バックへの負担が掛かり、ひいては3バックまで参加する攻撃への影響が出る。「前線からのプレス」は現代サッカーにおける常識であるし、広島のサッカーにおける生命線の一つでもある。よって、ここが欠ける選手はスタメンで起用されない。久保がスタメン起用されない理由の一つはこれだ。

 そして前田俊介が、ペトロビッチ監督就任以降の広島でレギュラーを獲得できなかった大きな理由もこの部分にある。動きの質、量ともに足りないので、どうしても途中起用で流れを変える存在としてしか見ることができない。しかし前田はさらに、不摂生がたたってかドリブルのキレも落ち、デビュー当時のように素早い体重移動で次々と相手DFをかわしていくシーンはまったく見られなくなった。つまり、サブとしても使い道がなくなっていった。

 ペトロビッチ監督は前田に対し何度も檄を飛ばし、2ちゃんねる国内サッカー板で一時期いろいろなところに張られるような長い説教をしたこともある。が、本人には届かなかったようで、昨シーズン途中で大分への期限付き移籍し、そして今回の報道へとつながった。再度書くが、報道の信ぴょう性は定かではない。しかし、流れとしては予想できた話だ。

 この話がどうあれ、前田が広島で活躍する機会は今後なかなか訪れないだろう。大分での前田のプレーを何試合か見たが、多少は走るようになったものの、オフザボールにおける実効性は低いと断じざるを得ないし、オンザボールで圧倒的な存在感を示したわけでもない。要約すれば「去年と変わっていない」というのが正直な感想だ。仮に広島に戻ってもレギュラーはおろか、桑田や平繁らと競ってサブを確保するのも難しいだろう。そういう意味で、移籍するのは正解だといえる。

 だが、やはり寂しさは残る。前田のような規格外のゴールを決める日本人FWは、過去に久保竜彦しかいなかった。2005年の大宮戦における得点は、上野が頭で落としたボールを、「ゴールに背を向けながら」「利き足とは逆の足で」「振り向きざまに」叩きこんだものだった。

■2005年・大宮戦における前田のゴール
 http://jp.youtube.com/watch?v=G8naRfsN4bY:MOVIE

 当時の僕は、前田の才能に熱狂した。「こんなゴールを決められる日本人が出てきたなんて!」と思ったし、そんな選手が広島ユースから出てきたことを誇りに思った。飛躍がすぎるが、当時の日本代表監督ジーコに対して「いますぐ前田を代表に入れろ! 高原よりも柳沢よりも玉田よりも点を取るぞ!」といった趣旨の発言をネットでしたこともあった。それほどに、前田俊介は夢を見させてくれる存在だった。

 移籍が確定したわけではない。だが、どの道広島での居場所はない。大分からオファーがあるなら、ありがたく頂戴すべきだろう。願わくば、その才能がもう一度花開かんことを。


※追記
前田俊介ファンによるプレー集