野口悠紀雄『超文章法』
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/10/01
- メディア: 新書
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方法論は、往々にして軽視される。
とりわけ「文章」という、一見して自由度の高いものにそれは顕著だ。いわく「自由に書けばいい」「ありのままを、思ったとおりに書けばいい」という、驚くような話をたまに聞く。それも、国語教師の口から出ることもあるそうで、本当なら困ったものだ。
方法論とはマニュアル、つまり「使い方」のことだ。アクセルとブレーキの使い方を知らずに車が運転できると考える人はいないのに、文章になるとなぜか方法論が軽視される。一般的に、マニュアルというものが何か「管理の象徴」と捉えられているせいもあるのだろう。が、マニュアルをきちんと読めば、車でも電化製品でもパソコンでもフルに機能を発揮することができる。文章もしかりだ。
この『超文章法』には、そういった「文章の威力を最大限に引き出す」マニュアルが詰まっている。とりわけ秀逸なのは、「何を捨てるか」つまり「何に集中すれば良いか」を明確に論じていることだ。
極端にいえばこの本は、第一章『メッセージこそ重要だ』を読むだけでいい。著者いわく、「メッセージが八割の重要性を持つ」とのこと。逆にいえば、ここを抑えていれば八割問題のない文章が書ける、ということになる。
著者のいう「メッセージ」とは、見出しに凝縮されている。いわく『ひとことで言えるか?』『書きたくてたまらないか?』『盗まれたら怒り狂うか?』というものだ。
これは、自分が文章を書く立場になればよく分かる。一読して分かる文章は「ひとことで言える」ものだし、無料だろうが有料だろうが「書きたくてたまらない」という気持ちに突き動かされねば勢いが出ないし、同じテーマを先に論じている文章を見つければ怒り狂うかもしれない。
この3つを気をつけるだけでも、あなたの文章力は劇的に向上するだろう。この『メッセージの重要性を認識する』という方法論は、それほどに強力なものだ。本の内容を要約してしまえるほどに。そして、文章という手段の本質をこのように要約できること自体、この『超文章法』がきわめて優れたマニュアルであることを示している。
もちろん、この記述以外にも重要な記述は多くある。とりわけ第三章の1『長さが内容を規定する』という部分は、ネットで書くことに慣れ過ぎた自分のような人間にとって忘れるべきではないノウハウだ。こういった優れた知見がたった780円+税で手に入る。コストパフォーマンスを考えても、迷わずに投資すべき額であるように思う。
繰り返しになるが、マニュアルを軽視すべきではない。優れたマニュアルは、ある手段の機能を最大限に引き出す。「文章の威力を引き出したい」人は、迷わず読むことをお勧めする。できれば、購入して。