柏木騒動の追記、および移籍金算出基準おさらい

 広島系のサイトを覗くと、どこも柏木の契約問題でもちきりだ。それはそうだろう、たった3年しかプレーしておらず、そのうち実質的に稼働したのは1年ちょっとの20歳が契約交渉でゴネるなんて前代未聞のことだからだ。

 僕自身も「いずれ柏木は移籍するだろう」とは思っていたが、まさか今シーズン末にこうした動きがあるとは想像していなかった。そういう意味で驚いてはいる。ここまで向こう見ずな選手だとは、というネガティブな意味で。
 彼の態度を擁護する向きも多少はあるようだが、おおむねサポーターの意見は「柏木何言ってんの?」が大勢を占めている。これはブログだけでなくmixi2ちゃんねると、ユーザーの位相が異なるサイトにおいてもほとんど変わらない傾向だ。

 当然の流れだろう、材料を精査していけば柏木を擁護する材料はほとんどない。擁護する材料としてはせいぜいが「選手がシビアに金銭要求するのは自由だ、当然の権利だ」という原則論ぐらい。だが、問題はシビアに権利行使する前に義務が果たせているのか、という部分だ。

 柏木の今シーズンの記録は、以下の通り。

 出場試合数  30試合(チーム10位)
 プレー時間  1,929分(チーム11位)
 1試合あたりのプレー時間  64.3分(チーム14位)
 得点数  4得点(チーム7位)

 平凡な成績としか言いようがない。分かりやすい指標である得点に至っては、DFの槙野と森脇よりも少ないのだ。

 今シーズンの柏木は調整が出遅れ、http://www1.jsgoal.jp/official/hiroshima/00060859.html その後復帰したと思ったら、明らかなコンディション不良でほとんど使い物にならず、「しばらくサテライトで調整させるべきではないか」と思った矢先にまたケガをした。http://www.jsgoal.jp/official/hiroshima/00064744.html 

 もっとも広島は、柏木不在時にただの1試合も負けていないので、結果という意味ではさほど影響していない。むしろ4敗すべて柏木が出場した試合で喫してさえいる。そういう観点からも、今シーズンの柏木のプレゼンスはさほど高くないといえる。

 本人はブログで「金銭目当てではない」というコメントをしているが、そのコメントは確かに信憑性が高い。この程度の成績でさらなるアップ要求をするというのは明らかにバランスを失しており、当初から「破談狙い、移籍ありき」の態度と取れなくもないからだ。

 ところで、柏木が仮に移籍する場合、移籍金はいくらになると推定されるのか? 改めておさらいしておきたい。こちらのJFAのpdfファイルによると、http://www.j-league.or.jp/document/jkiyaku/2006pdf/14.pdf 移籍金は平均報酬額×移籍係数で算出される。

 移籍金=(A)×(B)

(A)平均報酬額=(X+Y+Z)÷3
  X:移籍元クラブにおける現在の基本報酬
  Y:移籍元クラブが申し出た次期の基本報酬
  Z:移籍先クラブが申し出た次期の基本報酬

(B)年齢に応じた移籍計数
 ※柏木は20歳なので、「満16歳以上満22歳未満」の10.0が適用

 この式に、中国新聞報道による推測を当てはめhttp://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Sw200812030081.html さらに移籍先クラブが仮に「年俸2,500万円」を申し出たと仮定すると、

(A)(1,800+2,000+2,500)÷3=2,100
(B)移籍係数10.0

      2,100×10=21,000(万円)

 2億1,000万円となる。もちろん推測なので実際の金額とは異なるだろうが、おそらくこの近似値に落ち着くはずだ。ちなみに近い金額としては、2001年に中沢祐二が東京Vから横浜FMに移籍した際の金額が約1億7,000万円、2002年に山瀬功治が札幌から浦和に移籍した際の金額が約2億円とみられている。

 柏木はデビューしてからフル稼働したのは昨年ぐらいで、実績はU-20W杯本戦3試合先発出場、北京五輪代表最終予選6試合に先発出場したこと。しかしチームはJ2に落ち、自身は前述のコンディション調整の遅れが響いて本戦メンバーには選考されず、日本代表合宿に呼ばれたものの候補どまり。さらに、ここにきて未曽有の不況が重なり広告料収入減が見込まれ、各チームとも人件費削減を強いられている。あの浦和でさえ例外ではなく、今シーズン末における大型移籍の気配はいよいよ薄くなっている。

 いかに将来性がある柏木とはいえ、この実績の選手に2億円をポンと払えるクラブがJ1にどれだけあるのか、疑わしいと言わざるをえない。

 唯一、報道にあるヴィッセル神戸だけは測れないところだ。というのは、神戸は三木谷社長の個人資産から費用をねん出する可能性があるから。広島の久保会長も、社長時代に“リバウドを獲れ"と7億円用意したことがあるが、同じ手を使えば柏木の2億程度は大した金額ではないだろう。

 広島サポとしては当然ながら残ってほしいが、一方でサポとして柏木のプレーにはかなりの忍耐を強いられたし、チームとしても柏木から受ける恩恵よりは与えた恩恵のほうが多いとみられる。この上ゴリ押しで金銭アップを要求するようなら、気持ちが切れるサポーターも少なくないだろう。

 何らかの出来レースでない、本当に単なる契約交渉なのだとしたら、「大人しく」するべきだろう。柏木はたかが200万や300万でゴネるのではなく、その50倍稼ぐための実績を積むこと。そのポテンシャルはある。もっともポテンシャルとは、いつでも潰えるものでもあるが。