湘南戦の前に、千葉が素晴らしかったので

 ちょっと感想を書きとめておきたい。

 http://www.tbs.co.jp/supers/game/20081005_6388.html

 素晴らしい試合だった。他チームの試合を、それもJリーグを見ていて久しぶりに心を動かされた。「人もボールも、心も動かすサッカー」というのは、今日の千葉にふさわしい言葉だと思う。

 前半少し遅れて観戦を始めたので、深井正樹の電光石火の先制点を見逃した。そこからの印象を言うと、前半に関してはほとんどの時間帯で浦和と互角。局面でも互角だし、攻守の切り替えは浦和より早い。そして切り替えの早さ≒数的優位を作る回数の多さ。その回数だけ、千葉が優位に進めていたような印象がある。

ジェフユナイテッド市原・千葉
―――――――巻―――――――
―谷澤―――ミシェウ―――深井
―――下村―――――工藤―――
―青木――――――――――坂本
――――ボスナー―池田――――
―――――――岡本――――――

 縦一本で巻に入れてこぼれを拾うパターン、中央のミシェウ(良い選手!)に預けてサイドに展開し、谷澤達也や深井の突破力を使うパターン、ジェフのお家芸ともいえるハードワークからのハーフカウンターもある。 

 柏から今シーズン加入した谷澤、シーズン途中で新潟から移籍加入した深井も含め、全員が猛烈に動き回り、前後から挟み込み、身体をぶつけ、滑り込み、時にはファウルも辞さず相手を止める。あいまいさ、人任せの気分はそこにはない。中央のボスナー&池田昇平、サイドの青木良太坂本將貴ボランチ下村東美工藤浩平、トップ下のミシェウ、両サイドハーフの谷澤、深井、1トップの巻誠一郎、誰もがサボらない。規律とかディシプリンとか言うが、プレーに表れる部分としては要は「責任感」のことだと考えればいい。ジェフは、全員が泥臭い仕事を、責任を持って果たす。

 加えて、1トップの巻誠一郎がいい。前半だけで決定的なヘディングを2本も放っている。1トップで、しかもスピードがあるタイプではない。2トップに比べれば、相手のマークはより厳しいはず。しかし巻は、坪井やトゥーリオといった強力なDFを相手に何度も競り勝っている。恐らく、サイドに展開された時にDFの視界から消える動きをしていたりだとか、身体の使い方とか動きだしのタイミングとか、そのあたりが洗練されているのだと思う。

 そして、巻はヘディングの技術に関しては日本でナンバーワンのFW。ポジションさえ取れれば、ある程度厳しい体勢からでも首を振ってゴールに直結するヘディングを打てる。

 巻の存在があるから、千葉の選手はサイドの深い位置までドリブルでえぐることもできるし、アーリーで巻に当ててこぼれ球を狙うこともできる。シンプルな攻めだが、選択肢がいろいろ用意されている。ゆえに、攻守においてよどみがない。やることがハッキリしている。そりゃー強いわ。

 で、このブログはサンフレッチェ広島のファンが書いているので、ジェフの命運はさておき、「来シーズンの仮想敵」として考えたい。で、どっちが怖いかというと
どっちも怖い。

 ここまで一切触れなかったことからも分かるように、浦和はほとんど良いところなしだった。攻守の切り替えで敗れ、球際の競り合いでボールを失い、運動量で負け、ゴール前の競り合いでやすやすとシュートを許す。巻に何度も競り負けた坪井、ペナルティエリア前で深井にやすやすとターンを許した阿部(深井は素晴らしいキレだった)、シュートコースをきちんと切れずミシェウに決勝点を許したトゥーリオと阿部といい、組織でも個人でも敗れるシーンが多かった。

 とはいえ、やはり浦和は浦和。前半のチャンスはほとんど1回ぐらいしかなかったように記憶しているが、そのたった1回を決める。エジミウソンが前線守備から奪ったボールをそのままスルーパス、前線で
なぜか田中マルクス闘莉王
 が決めたシーン。あるいは平川のサイドチェンジを永井が粘って折り返し、エジミウソンが決めたシーン。

 ほかにも、完全にトップに張っていたトゥーリオに次々とボールを放り込み、
片っぱしから競り勝っていた
 ところ。個人の能力の高さという部分ではJ1随一だし、間違いなくサンフレッチェを上回る。特に、「高さ」という部分で相変わらず広島は弱点を抱えている。浦和とうまく戦って、終盤まで1−0でリードしたとしても、こういうパワープレーをされるとなかなか持ち堪えるのは難しい。結城をマンマークにつけても、恐らく競り勝てないだろう。良い態勢で競らせないこと、こぼれを拾うことに集中するほかない。

 だが、真に恐るべきはジェフ千葉。広島が「やられると怖い」ことを、すべてやってくるチーム。前線からの献身的な守備、1対1で臆せず仕掛けてくる、サイドを厚く保ち、奪ったら相手の薄いところに素早く繋ぐ、アーリークロスから展開する……そういうことを「90分継続して」やってくるチームはJ2にはいなかった。仮の話だが、いまのジェフがJ2でプレーしたら、おそらく今年の広島と同じぐらい独走したのではないかと思う。

 そして何より、その強い強い千葉が浦和戦終了時点でようやく14位に脱出したにすぎないということだ。http://www.tbs.co.jp/supers/data/2008table_j1.html これを見ても分かるように、18位の札幌はともかく、17位大宮から9位神戸までは勝ち点差たった5しかない。これほどまでに僅差になるのは、それだけ実力が競っているということ。

 広島は来年、この熾烈を極めるダンゴに飛び込んで切磋琢磨するのである。さて、

 準備はできているか?