動画と画像でみる、広島守備のヤバさ---そもそもなぜJ2降格したのか?(4)

 ってことで、動画にしました。つってもyoutubeですけど。

 確かに今シーズンの広島はJ2最少失点なわけで、2番目に少ないチームよりもだいぶ少ない。ですが、それって「守備が堅い」ということなのか? というと僕は「そうでもない」という立場です。というのは、もちろん論理的にも説明を試みますが、まずは感覚的な部分で話すと、広島の失点シーンってめちゃくちゃ「ユルい」のが多いと思いませんかという話。

 例えば鹿島だと名前も身体もゴツい岩政、大岩がいて曽ヶ端がいて、中盤に小笠原(ケガ早く治りますように)と青木がいて、全体的にどいつもこいつも当たりに強く運動量が多く集中が切れず、要するに「よっぽどのことしねーと点は取れない感」がアリアリとある。実際に鹿島は失点も少ない。

 ところが広島の失点は、なんというか「軽い」んです。サッカーメディアで流行ってる失点でいうと「安い」とでもいいましょうか。とても強豪チームとは思えない失点シーンが多い。セレッソ戦でもそうですが、「論理的に失点する」パターンが多い。論理的ってのはつまり


そりゃやられるわ
→あー、やっぱやられた

 つーパターンですな。鮮やかな大勝、内容も圧倒した試合ばかりにも関わらず、守備に対する不安が消えないのはちゃんと理由がある。とりあえず、まずはこちらの動画に目を通しておいてください。後ほど説明します。

http://jp.youtube.com/watch?v=GXqFrBT_Q3U

 その理由を指摘する前に、まずは自分なりにフェアを期すよう、「去年から改善された部分」を挙げておきましょう。

■昨年のフォーメーション

 思い出したくもないでしょうがw 去年の基本フォーメーションはこうでした。

―――――佐藤寿――――ウェズレイ――――
――――浩司―――――――――柏木――――
服部――――――――――――――――駒野―
――――――――青山―――――――――――
――盛田―――――戸田―――――カズ―――
――――――――下田―――――――――――

 3-5-2のワンボランチ。戸田、盛田、森崎カズという3人のDFは、GKからハンドスローでボールを受けて低い位置からビルドアップをするという戦術のため選抜されたもの。そこでは守備力という概念は二の次になっていました。

 んで、このチームは横浜FCより多い71失点もかまされるわけですが。原因は多岐にわたっていました。「2トップがボールを追わない」「DFラインがラインを作らない」「押し上げが足りない」「1ボランチなので中盤にスペースが空く」「それを埋めるために両サイドは下がり、5バックになる」「それによってこぼれ球が拾いづらくなる」……etc.

 2トップがボールを追わないことで、相手のボランチサイドバックがフリーになってこちらの中盤に侵入してくる。それを追うために柏木や浩司が走りまわり疲弊する。と、今度は駒野と青山、あるいは服部と青山の間のスペースが空くのでそこを使われ、青山は左に右に振り回され疲弊する。

 そのスペースを埋めるために服部や駒野の位置は引き気味になり、事実上5バックになる。事実上5-3-2になる。で、「引いてるだけ」なので、相手のパスコースを制限できず振り回されまくり、相手のシュートやミスがない限りボールを奪えない状況が続いていた。要するに悪循環の連鎖で、

そりゃ71失点するわ

 という守備だった。あ、これは別項で述べますが、「攻撃力でカバーすればいいじゃないか」と考えてる人はそれが間違いだってことに早く気づいてください。去年の広島は、途中からまったく点を取れなくなってましたよね。それはウェズレイの不調もあるんでしょうが、逆にいえばウェズレイがダメならコケるという「全員攻撃」というコンセプトから程遠い状態だったということ。なぜかというと、こうした守備への忙殺、それによって後方へ意識を引っ張られることで前線に飛び出せなくなり、またその体力もなくなったという状況があったからです。

■今年のフォーメーション

 これが今年になり、若干改善された。今年の布陣はこうですね。まあ、おびただしい数のケガ人が出たので、何をもってベストとするか未だに判然としませんが、

――――――――佐藤寿――――――――――
――――柏木―――――――浩司――――――
―服部――――――――――――李―――――
――――カズ――――青山―――――――――
――盛田――――ストヤノフ―――槙野―――
――――――――佐藤昭――――――――――

 1トップ2シャドーはしっかりプレスを掛けに行く、サイドに追い込む、そこに前と後から挟み込む、縦を切って中に行かせそこで奪い取る、さらに個人として「競り合いに負けない」こと、攻守の切り替えを早くすることを徹底する、そうした意識づけにおいて今年のチームは昨年よりはるかに上でした。

 が。これって「個人の意識を高めた」以外ではないですよね。チームとして、組織として改善しなければならない部分は、ほとんど手つかずです。

 それが例えば甲府戦のシュートシーンです。ちょっと見てみてください。

http://jp.youtube.com/watch?v=GXqFrBT_Q3U

 0:53頃、ストヤノフのクリアボールを相手に拾われたシーン。前後のプレーが映っていませんが、まあDFラインがえらい引いてます。ペナルティエリア内まで引いてます。当然、その前にはスペースができます。そこを使われて、0:57の時点では

 画質汚くてすいませんがw 中央に2枚、逆サイドに1枚フリー、さらに中盤に2人フリ―な選手がいます。ボールサイドに寄っているのはおそらく青山ですが、彼はこのフリーな2枚に行けません。で、さらに0:59ではシュートシーンまで持っていかれるわけですが、

 ボールに競ったマラニョンにはヘディングを打たれ(おそらく結城がマーク)、さらにエリア内に2人ものフリーな選手がいます。クロスを上げた選手にもう少し技術があれば、このどちらかに合わせて1点のシーンだったでしょう。はっきりいってありえないシーンです。

 さらに続くと、1:07のシーン。広島サイドにボールホルダーがフリーで侵入しているのに、誰もアプローチに行けていません。

 そこから甲府にワンタッチ・ツータッチの速いテンポでボールを回されるわけですが、誰も付いていけていない。最初の出所をつぶせておらず、DFラインはバラバラのポジショニングを取り、

 こういう風に、本来ならばオフサイドを取れる選手に完全に裏を取られ、

 

 さらに、中央に入り込んだ選手を完全にフリーにしています。これって、

去年と何が違うの?

 と思いませんか? 僕はすんげえ思うんですけどw まあここまで広島が崩された試合って甲府戦ぐらいしかないわけですが、甲府って別にJ1で特別に強いチームではなかった(良いチームではあった)し、何よりJ2に落ちてるチーム。そこの攻撃に対してチンチンにやられてるわけなので、「こりゃJ1ではヤバいな」と考えるのはごく当然のことではないかと思います。

 で、身も蓋もないことを言うと、ペトロビッチ監督に

ここを修正する能力はない

 と判断せざるを得ないでしょう。何度もチャンスはあったのに、彼がやったことはボール回しの質を高めること、個人の守備意識を高めることだけなのだから。

「ミスをなくせば失点が減る」というのは「油を減らせばカロリーオフ」ぐらいに誰でもわかること。僕にだって分かる。もちろんプロである選手たちにはそれが当然分かっている。はず。いや分かってない選手もいるかもしれないけれども、少なくともカズは分かっている。

http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00071344.html
>●森崎和幸選手(広島)
「接戦の時ほどセットプレーでの失点に気をつけなければいけない。いつも自分たちのペースで試合ができるわけではないので、こういう試合もあると思って我慢しながらやっていた。チャンスもいつもよりなかったし、ピンチもありすぎた。全体的に下がりすぎていた部分もあると思う。アーリークロスを上げさせないために、ボールにプレッシャーをかけないといけない。そのためには、ラインをもう少し上げないといけないと思うし、チーム全体で考えていかないといけない

 強調は引用者。これは、広島が15本ものシュートを浴びせかけられ何とか引き分けた横浜FC戦後のカズのコメントです。この部分を読む限り、彼は「構造」に気づいている。何の構造か? 「ミスが起きる構造」です。

 こういうのは本来、監督の仕事です。「なぜミスが起きたのか」を突き詰め構造的に考え、「これは組織に問題がある」と結論が出ればそこに手を付ける必要がある。こうした問題はJ1でも直面していたので、守備組織に問題があるというのは明白です。でも、ペトロビッチ監督にその考えはない。彼は守備に手をつけず、攻めきるということしか考えていない。

だから外国人DFを取れ

 と言ってるわけなんですね。ペトロビッチ監督の解任はない。解任することはベストでもベターでもない。彼は、攻撃面では確かに素晴らしいチームを作っている。若手も育っている。柏木が「お父さんのような存在」と語るように、彼を慕う選手は多い。ここを取り崩して守備だけを固めると、小野前監督末期のような窮屈なチームになる可能性がある。それはうまくないので、

ペトロビッチ体制の矛盾を一身に引き受ける

 ような強力な外国人DFを取る必要があると思います。できれば4バックができればいいんですが、ペトロビッチが3バックをやりたくて、3バック向きでない選手をほしくない(=起用しない)というのならそれも仕方ないでしょう。

 さて、次回でまとめます。