「わざわざ消耗戦を選ぶのか?」なvs.甲府雑感

 正直、どう評価していいのか分からん。いや、勝ったし無失点だし6連勝だし、一試合消化試合少ないのに2位以下に勝ち点差7ってのは、控えめに表現しても「独走態勢を築きつつある」ってこと。

 この試合に臨むにあたっての状況は、結構厳しかった。中2日(これは両チーム同じ)、未勝利の甲府・小瀬での試合、レギュラーのMF青山が代表招集食らい、サブの高柳が負傷離脱、FW平繁が体調不良のため帯同せず。

 おまけに試合中にレギュラーのDF森脇が負傷した。このため試合中のフォーメーションチェンジを余儀なくされ、負傷明けの桑田・柏木を予想外に早いタイミングで使わざるを得なくなった。

 ものすごエクスキューズだらけの試合。なので、オッケーとしてしまえばいいのかもしれない。というか、そういう風に考える人が間違ってるとは思わない。思わないのだけど、オレは「もう少し要求したい」「これでJ1で通用するの?」っていう視点から書いてみます。

http://www.tbs.co.jp/supers/game/20080611_5694.html

http://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Ss200806110396.html

 個人的には、甲府に対して苦手意識はない。確かに甲府には勝てなかったが、どの試合も「どっちにも転びうる試合を競り負けた」という印象しかない。同じく2003年から勝利のない、川崎相手に感じる意識とは違う。甲府の広島対策や、戦術的徹底ぶりには感嘆を覚えたけれど、それ以上に広島の不甲斐なさに苛立ちを覚えるほうが多かった。

 そういった意味で、この試合の感想もやはり「広島がどう戦ったか」にフォーカスを当てたい。というか、甲府だって広島だって所詮J2だ。J2のチームに勝って、それも「甲府専用の戦術」を用意して勝ったからといって、それが他の試合で積み上げた勝ち点3以上の意味があるのか、疑問なのである。

 だってさー、何度もいうけど相手はJ2の、11位に沈んでる甲府だよ? J1には甲府ほどアホみたいにプレッシングしてくるチームはなくとも、甲府よりポゼッションでき、甲府より段違いにフィニッシュに持ち込め、甲府よりセットプレーが強く、甲府より飛び道具を持ってるチームはたくさんいるわけで。

 そして広島の当面の目標は、J1に上がってそうしたチームと互角以上に戦って上位に食い込むことなわけで。

 そう考えるとね。J1昇格ということを考えれば順調だし、選手はとりあえず個別評価をおいて「お疲れさん」と声を掛けたいところだけど、監督には。。。。

 この試合で、広島はいつもと違うことをやりました。こういう布陣。

――――佐藤寿人――――
―――――高萩―――――
服部―――――――――李
――森崎和――森崎浩――
槙野―――――――森脇―
――ストヤノフ―結城――
――――木寺――――――

 ただ、テレビではじっくりとは確認できなかったけど、実際には結城は相手センターフォワードの前田をベッタリマンマークしていたようです。4バックというよりは、いつもの3バックに「マンマーカー」を入れ、そのぶん中盤・前線から1枚メンツを減らした形。

 この戦術の狙いは明白で、「甲府という蛇口を出口で締める」ことだった。甲府のこれまでの試合をみると、強みとしては高い位置までボールを運んでいくポゼッションスキルがあり、一方で明らかな弱点として「フィニッシュに持ち込めない」「フィニッシュの精度が悪い」ということがあった。

 ペトロビッチはここに着眼した。ベタ引きにしてスペースを消し、フィニッシャーにマンマークを置いて殺せば、甲府は最終的に何も出来なくなる、と。そしてその戦術は完全に当たった。シュート本数こそ甲府のほうが上だが、実際に崩されたシーンはなかった。また、結城に張り付かれた前田は、恐らくシュートゼロに終わった。

 一方でサンフレッチェは決定機を量産した。佐藤寿人が迎えた2度にわたるGKとの1対1、得点につながった高萩の飛び出し、桑田の飛び出しなど、引いて守って手数をかけずに攻めるやり方で完璧に相手を篭絡した。この試合に関していえば、完全にペトロビッチの作戦勝ちです。ストヤノフが携帯サイトに「監督が立てたゲームプランは完璧だった」とコメントするのも当然かと思う。

 そのやり方が是か非かといわれれば、結果を出した以上「是」でしょう。そしてこういうサッカーをするのは甲府戦以外ないでしょうから、忘れても構わないかもしれません。

 ですが、ベタ引きになって攻め込まれ、ラインの押し上げもうまくいかず、時間帯によってはクリアするだけの状態になったのは事実です。リスクを負った相手DFラインの裏を突き、何度も決定機を作り、CKから2点目を奪ったわけですが、それがなければジリ貧になってもおかしくなかった。

 つまり、「わざわざ消耗戦を選ぶのか?」って気持ちなんですよね。こんなに普段と違うやり方で、「相手に合わせることはしない」という普段の言い分を捨ててやらないと、甲府には勝てないのか。

 選手のポテンシャルの差を考えると、「絶対にそんなことねーよ」と言い切りたい。「普段どおり」で勝てる相手だし、勝たなくてはいけない相手。そしてその「普段どおり」で勝てないという決断をしたのは、すなわち守備戦術の不徹底さゆえだと思っています。そこがね、単純に不満なんです。「本質的には去年と変わってないのね」と思わされて、なんだかスッキリしないのでした。

 まあ、いいか、もう。ワーイ勝った勝った