「で、一誠、どうするよ?」な岡本知剛トップ登録

 この時期に来たか、というのが率直な感想。


http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=2191&m=6&y=2008
サンフレッチェ広島では、サンフレッチェ広島F.Cユース所属 岡本知剛選手のトップチームへの昇格を決定致しましたのでお知らせ致します。
http://www.jsgoal.jp/photo/00030300/00030350.html
>昨年のU-17世界選手権で活躍した広島ユースの岡本知剛。U-19にも選ばれている逸材だが、
>この日はついに「トップデビュー」。ボランチで堂々たるプレーを見せ、周囲の耳目を集めた。
>対戦した選手たちも「あれでスクールボーイなのか」と驚いていたようだ。

 これは「来シーズンの昇格」ではなく、今シーズンからのトップ登録と思われる。根拠はこのくだり。

サンフレッチェ広島F.Cユース(広島県立吉田高校)※転校予定

 恐らく高萩洋次郎が2003年にトップチーム登録されたのと同じように、ユースから籍を抜いてプロ入りということになる。プロ入りするので二葉寮に入寮するので、三矢寮付近にある吉田高校には通えない、なので転校と。

 岡本自身のクオリティにはまったく問題がない。

 どころか、練習を見学した人によれば「サテライトで一番うまいのは岡本だった」という証言すらある。U-19でもほとんどの試合でレギュラーを張っており、幾つかの試合を見た限りでは誰もが岡本を頼り、DFラインでボールを拾えばまず岡本を探していたように思う。この世代における岡本の存在感は抜きん出ており、18歳にしてすでに力量に疑いはない。

http://jp.youtube.com/watch?v=6bgxaIRa1Vc:MOVIE

 2:06あたりから、岡本のゴール。相手が弛緩した一瞬を見逃さず、誰より早くボールサイドに寄り、相手の寄せが間に合わない素早い足の振りで完璧なゴールを奪った。このゴールだけ見ても、彼の技術の高さ、状況判断の早さ、確かさが見て取れるだろう。

 今シーズンの広島は圧倒的にボール保持をする試合がほとんどで、ゆえに岡本が慣れない守備に追われる可能性も低く、自身の特徴である長短織り交ぜたパスワークと展開眼を生かす素地は十分にある。

 もちろん「早い時期にトップ昇格させたこと」については、2003年に16歳で抜擢され当時のJ2最年少出場記録を更新した高萩の、その後の伸び悩みのケースを思い出す方も多いだろう。だが岡本の場合は高校3年生であり、この年代の2歳差は大きい。高萩のときのように上げてみたものの、ちっとも筋力がつかず、J1の当たりの厳しさについていけないような可能性は少ないと思われる。

 これで最激戦区であった中盤が、さらに激戦区になることは必至。すでにこちらの記事にもあるように、ペトロビッチは同じく新加入の結城をボランチ起用する含みを残している。

http://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Sw200806110144.html
Jリーグ2部(J2)首位の広島は11日、山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場で11位の甲府と戦う。U―23(23歳以下)日本代表の青山敏弘が不在のボランチに、J1千葉から移籍加入した結城耕造がいきなり先発する可能性が出てきた。5日に広島に合流したばかりで、実戦は9日の練習試合だけ。ペトロビッチ監督は「百パーセント決めていないが」と前置きして「いい印象を持った。経験ある選手」と期待を寄せる。
山梨県内であった10日の練習では、FW久保竜彦との一対一で、185センチ、79キロの体格を生かして何度も体を張った。積極的なミドルシュートも放ち、柔軟なプレーを見せた。本来はストッパーだが、「ポジションは関係ない」と新天地でのデビュー戦を待つ。

 ぶっちゃけ、これはすべて高柳一誠がケガをしているためだろう。彼が本来のパフォーマンスでフル稼働できるなら、恐らくこの時期に岡本を昇格させることはなかったはずだし、結城がボランチで起用されることも恐らくなかったはず。

 なんせ、今サンフレッチェの中盤はこういうことになっているのだ。

―――高萩―――――森崎浩――
―(柏木、ユキッチ、高柳、桑田)
――――森崎和――青山――――
―(高柳、森崎浩、結城、岡本)―

 3−6−1を基本とするなら、2シャドーの候補だけで高萩、森崎浩、柏木、ユキッチ、高柳、桑田と並ぶ。このうち試合出場できるのは2名のみ。2トップにするということを考えると、この“出場候補”の中に平繁の名前も入れていいかもしれない。

 そしてボランチの候補も熾烈を極める「ようになった」。森崎和が復帰したことで、1枠は完全に固定された。残りの1枠の一番手は青山だが、彼は今年は五輪のため試合出場がポツポツ途切れる。一応森崎浩司もココをプレーできるのだが、本来のポジションはFWの近く。よって、2番手には高柳が浮上していた。

 高柳の立場からみれば、青山がいない間に好プレーを続ければ、レギュラー奪還することは決して不可能ではなかった。昨年のキャプテンである戸田は監督からの信頼をなくしており(その後千葉へ移籍)、ボランチを“本職”とする試合経験のある選手は高柳のみという状況だった。

 しかし、彼は代表から青山が一時的に戻り、結城が加入するタイミングで負傷し(ソースは携帯サイト)、湘南戦のベンチ入りメンバーから外れた。

 もし今日の甲府戦で結城がボランチで先発し、目覚しいパフォーマンスを見せるようなことがあれば。それは一誠にとって、サテライト降格を意味する。青山が戻れば結城がサブに定着するだろうし、この時期にトップ登録した岡本もどこかで使われるはず。そして新加入の2名に共通するのは、すでに実力はある程度保証されているということ。つまり現時点で、ペトロビッチはわざわざ負傷明けの高柳を使う理由がなくなってしまったのである。

 もちろん、こうした選択をすることは正しい。チームの力量の最大化を図るのが監督の仕事であり、最大化を追求する過程で切り捨てられる戦力はどのチームにも存在する。それがプロの現実なのである。