自分が岡ちゃんなら - オシムのアドバイザー就任に思う

 自分が岡ちゃんなら、という前提で自分の意見を述べてみる。色々捉え方はあるだろう。

 http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/headlines/20080604-00000036-spnavi-socc.html
オシム氏は今後、指導者養成、ユース世代の育成、日本代表チームなど日本サッカー全般に関して助言などを行う。また、オシム氏は今月行われるユーロ(欧州選手権)2008を視察する予定で、田嶋幸三専務理事は「オシムさんの経験を生かして日本のために海外サッカー情報を仕入れてもらいたい」と、オシム氏の広い人脈による情報収集能力にも期待を寄せた。

 代表だけじゃなく、色々やるらしい。オシムが日本サッカーにかかわり続けることは喜ばしいし、長期的にみても日本サッカーのためになるだろう。人気回復につながるかはともかく、サッカーファンが喜びやすい人事だとはいえるだろう。

 だけどなー。自分が現場責任者だとしたら、微妙な気分だと思うけどな。
 偉大なる実績をもつ前任者が病に倒れて、ピンチヒッターが誰もいず、雇い主の組織が腐りきっているのは誰の目にも明らかなまさに“火中の栗”状態な日本代表監督の座。

 日本代表監督に金銭面以外でのメリットがあると思ってる人がいるかもしれないが、実際はとうぶんW杯開催はないし、他国と比較して有能な若手が揃っているわけでもなく、近年の国際大会(W杯、五輪など)の成績はパッとせず、W杯で上位を目指せる可能性は低い。従って、欧州でビッグネームを目指す監督の踏み台にはなりにくい。

 いっぽう日本人監督においても、功罪合い半ばする部分がある。日本を代表するチームを編成できる名誉はあるが、協会・J機構・Jチームとの折衝において学閥的な力関係などがあり、チーム作りは外国人に比べてやりにくい面が多々ある。日本人は「勝って当然」という思いが強く、W杯予選で少しでもコケようものなら「解任だ!」の大合唱を食らう。もちろん、そんな中でも雇い主の協会は特に守ってくれるわけではない。というか雇い主自体の信用が低い。

 2002年までならともかく、外国人監督にとっても日本人監督にとっても、日本代表監督は決して美味しいポジションとはいえなくなった。

 そんな厄介なオファーを、岡ちゃんは、家族の同意も十分に得られたか定かでない状況で引き受けた。周囲はもちろん選手からも、前任者の仕事ぶりと常に比較され、しかも就任わずかの間にW杯予選が始まり、結果を求められるシビアな状況だった。

 腕の未熟さはあったかもしれない。が、他に誰も引き受け手がいない中で、(おそらく)ベストを尽くした。結果についても、アウエーでバーレーンに敗れるという大失態があり、当然ながら解任論も浮上したが、とりあえずは凌ぎきっている。

 この状況下で、病に倒れた偉大なる前任者が「アドバイザー」名目で上に立つという。結果を追求するならば、それはそれで良い方法論になる可能性もあるし、一概に否定はしない。

 ただ。否定はしないけれど、“自分なら嫌だ”程度のことは書いても構わないだろう。自分が岡ちゃんなら。いかに偉大な人物とはいえ、プロとして対等の立場にあるはずの前任者が、何の了解もなく上に立ち、自らの仕事に指図してくるような人事は。まるで火中の栗を拾った恩など「なかったこと」にされたかのような気になる。

 前任者にアドバイスを乞わないとやっていけない代表監督なんて、誰がやりたいと思うのだろう。岡ちゃんだけでなく、この人事を目撃した多くの監督は「やっぱり日本サッカー協会は」と思うのではないだろうか。はるか以前に決まっていたであろう話であるとしても、今回の人事は、失態続きの日本サッカー協会が目先の点数稼ぎに走った結果のような気がしてならない。

 オシムに含むところはないし、岡ちゃんへの批判はあって然るべきだろう。だが、だからといって前監督が現監督の上に立つような人事をすんなり肯定するには、色々な譲歩が必要になりそうだ。