J2、大いなるぬるま湯(第三節終了時点)

 まだ3試合を終わった段階ですが、現時点で気付いたことをメモ。

 草津、愛媛、湘南、それからTV観戦ですが仙台、福岡と5チームを見ました。で、正直な感想としては、いまんとこ「J2恐るるに足らず」。もちろん「≠ラクに昇格できる」。「真の敵は内にあり」という意味であり、また力の差があるということは、何チームかは2003年と同じようにドン引きサッカーをやってくる可能性もあるということ。

■J2雑感(草津、愛媛、湘南、仙台、福岡)
・化け物がいない(フッキ級の選手)
・ラストパスの精度が低い
・ミドルシューターが少ない
・コメントがヌルい(去年のウチのようだ)

 まずここから。

 ・化け物がいない

 昨年のJ2をチラリと見た限りでいうと、昇格した3チームはいずれも前線に馬力のある選手がいた。特に“化け物”だったのは言わずと知れたフッキ(東京V⇒川崎)で、彼は異次元のプレーをし、セルフィッシュでありながらも、終わってみれば1人で決めたみたいな試合が結構あった。

 広島の3バックは、1対1にさほど強いわけではない。槙野はまだまだ素材の段階だし、盛田も腰の位置が高く、重心の低いドリブラーにはてこずりそう。ストヤノフにしても先読みのカバーリングは素晴らしいものの、1対1でボールを奪い取る強さはない。フッキクラスの選手がいれば、相当苦しむと思われる。

 しかし今のところ、フッキに匹敵する選手は見当たらない。水戸のアンデルソンはエリア内で自由にさせたらやばそうだが、ドリブルやミドルシュートフリーキックなど、「1人で何でもやる」怖さを持つ選手はいない。

・ラストパスの精度が低い

 これまで当たった3チーム、観戦した2チームいずれもに感じたこと。ラストパスまで持ち込む過程でも、ラストパスそのものでも、ミスが多すぎる。コンビネーション以前に、狙った場所に狙ったタイミングで狙い通りのボールを送り込む技術がない。

 広島は服部の後方が弱点の一つだが、そこに展開されてピンチになりかけたときも、相手が勝手にミスをしてくれている。「この場所に!」というボールが短かったり横にブレたり、「このタイミングで!」というところでモタついたり、「このボールを!」という球種がロブだったりグラウンダーだったり。

・ミドルシューターが少ない

 まったくゼロというわけではない。湘南のアジエルは、晴天ならばかなり脅威だろう。しかし川崎のジュニーニョ中村憲剛、鹿島の本山、小笠原、G大阪の遠藤・二川あたりと比較できるほどの選手はいない。アジエルにしても、ジュニーニョに比べればずいぶん「優しい」選手だとみる。

 他のチームに関してはどうか。草津の島田&熊林、愛媛の青野&江後、湘南の坂本&田村、それから仙台のリャン・ヨンギ&永井、福岡のタレイ&城後、いずれもさほどのシューターとは思えなかった。

 仙台・福岡は両チームともかなりミスが目立ち、エリア15メートル付近で前を向いてボールを受ける機会もあったが、そこでミドルを打てる選手はほとんどいなかったように思う(後半を見ていないので断言はできないが)。

 鉄壁のように思われている広島守備だが、脅威にさらされると簡単にラインを下げる悪癖がある。このクセは草津戦でも見えており、克服されていない。ドン引きすれば中盤にスペースが生まれ、シューターにとって格好の餌場になる。しかしJ2でここを突いてくる選手は、今のところアジエルぐらいしかイメージできない。

・コメントがヌルい

 もっとも致命的なのはココではないか。どのチームも、敗戦について重く受け止めていないのだ。

 先ごろのエントリーでは湘南の選手のコメントを紹介したが、草津にしても愛媛にしても似たようなもの。ロクにチャンスも作れず完封負けしたのに、異口同音に「手ごたえ」を口にしている。広島がゼロックスで優勝したことで「格上」意識があり、「42試合もあるうちのたった1敗」という意識もあるのだろう。

 しかし、0−3で負けておいて「広島だから強いとか、そんな印象はないし、チームとしても全然やっていけると思います」http://www.jsgoal.jp/news/00062000/00062158.htmlなどとのたまう選手に将来はない。試合前からビビっていたことが丸分かりである。「胸を借りる」つもりだったのだろう、だからこそ「思ったより強くない」などという、プロとしてあるまじきコメントが出る。ACミランと対戦した浦和が言うなら分かるが、というレベルである。

 何連敗しても何試合未勝利でも、毎年スタメンがコロコロ入れ替わっても、観客動員が底ばいでも、昇格を逃し続けようと最下位だろうとリーグにはずっと留まることができる。財政は逼迫し赤字がかさみ、広告料収入も入場料収入も伸びず、放映権料収入の分配もスカパーに打ち切られれば怪しい。財政破綻は現実の脅威としてあり、危機意識を訴えるサポもいないことはない。にも関わらず、プレーする選手はどこか牧歌的。それがJ2、大いなるぬるま湯。

 広島スレに「金満広島は勝って当たり前」などとほざく輩がちん入したが、広島の財政規模がJ1で何位か、観客動員数が何位か、デオデオによる補填がなければ昨年度の赤字もすさまじいことになっていたこと、などを知らないのだろう。広島はJ1ではしょせん「奪われる側」のチームである。財政的に潤っていれば、昨年の降格もサクッと強力なブラジル人を補強するなどして回避できたはずだ。そんなチームに手も足も出ないで負けることがどれだけやばいのか、よく考えるべきだろう。


 多少脱線したが、ともあれ現時点でJ2に「怖い」と思えるチームはいない。湘南クラスが昇格の有力候補なら、他も大差ないだろう。怖いのは「オレたちは弱い」と開き直られドン引きサッカーをされること。真っ向勝負を挑んできてもらうほうがはるかにやりやすい。

 ここでJ2の改革論をぶつつもりはない。先のエントリーでも書いたが、広島は淡々と昇格を決めれば良い。盛り上げる必要もない。むしろ「あんまり強くない」と思われ、「次やれば勝てる」という期待を与えることのほうが重要かもしれない。

 そういうことで、湘南戦から中2日の水戸戦は、多少の苦戦もありではないか。実際コンディション的に難しい選手も何人かいそうだ。無失点記録なんてさっさと破られたほうが良い。スコア的には無難に2−1あたりが理想だろう。

 今季の広島のテーマは、どうやら「苦しみながらも勝つ」になりそうだ。引き続き、そこそこ苦戦し続けてほしい。