音楽版“俺ミシュラン”2007その4

■1位:Perfumeポリリズム』『Perfume〜Complete Best〜』

 もはや言うまでもない(笑)。2007年、もっとも僕を夢中にさせてくれた存在です、Perfume。いま日本でこれだけ「カッコイイ」と「カワイイ」を高次元で両立させてるグループがいますか。オレは知らんぞ。

 mixiでは何度も何度も何度も何度も(笑)語っていることですが、Perfumeの他を圧倒する唯一無二の強みは「アイドルであること」。それに尽きます。

 今の日本のアイドル歌謡は、ほとんどカッコよさとは無縁の世界で、CDはヲタク向けのアイドルグッズに堕していることが非常に多い。僕自身アイドルのCDは買ったことないので断定はできませんが、それでもランキング番組などでたまに目にすると、やっぱり「うわぁ……」ってなる。人に薦めようと思うどころか、「こんなの聴いてるヤツは……」と思うことがとても多い。

 しかしPerfumeはそうならなかった。一聴して「え、これはなんだ???」と思わされた。これまでの「アイドルソング」の常識を大幅に覆される、重厚に折り重なったタペストリーのようなトラック。尋常じゃないほど低音が利いていて、ボーカルをさえぎるほどに鳴っている。J-POPの規格さえも超える、アンダーワールドダフト・パンクといった海外アーティストと比較できるような高品質のサウンドだった。そんなサウンドに乗っているのが、実にスイートな、しかしエフェクトをバキバキに掛けられた女の子のボーカル。その時点で、もう僕の常識を完全に超えていたわけです。

 で、興味を持って「どれどれ?」と調べてみると、3人はアイドルだという。「これがアイドルなら、今までのアイドルはなんなんだ?」と思わざるをえない。聞けば結成8年目で、それまではいわゆる「地下アイドル」としてオタクの前で一生懸命踊ってはCDを手売りし、解散の危機も乗り越えてきたのだという。さらに過去の曲を聞いてみると、特にメジャーデビュー以降の曲はすごくクオリティが高い。

 さらに調べると、ネット上ですごく人気のある存在だと分かった。ニコニコ動画で「初音ミク」によるMAD動画が大量に作られており、さらにニコニコ市場では2006年に発売したベストアルバムが3000枚を越す売り上げを記録し、Amazon売り上げランキング1位になったという。「何か、すごいことが起こっている」ことを、否応にも感じざるを得なかった。

 Perfumeの魅力は曲だけじゃない。PVも非常に作りこまれていて、『フィフス・エレメント』や『ブレードランナー』あるいは『新世紀エヴァンゲリオン』のような近未来調なイメージがすごくよくできている。そんなプラスティックで硬派なイメージとは裏腹に、喋るとユルユルの広島弁で、しかもナチュラルに毒舌や自虐ネタを発して、そこら辺のお笑い芸人よりはるかに面白いMCをする。

 無機質さと人間くささ、テクノ/ハウス的な冷徹さと体温のあるキャラクター、軽快な音と演歌的な下積み生活、さまざまな相反する要素を同時に内包し、いっさいの矛盾を軽やかに蹴っ飛ばし、今日もPerfumeはコケティッシュに踊る。このギャップ、そら男はコロリとやられますよ。

 かつては一部コアファンの所有物だった彼女たちも、今やアミューズいちおしのアーティストになった。アイドルヲタクから確実に音楽好きの層に広がっているけれども、しかしその言動はアイドルそのもの。「オリコン上位に入りたい」「紅白に出たい」という、もはや時代錯誤的な夢さえも、彼女たちが発するなら応援したくなる。色々な価値観を塗り替えていく彼女たちは、まさに新しいアイドル、いや「真のアイドル」にふさわしいのかもしれません。

 2007年は彼女たちのサクセスストーリーに乗っかって楽しませてもらいました。2008年もよろしく! の意味を込めて、1位はPerfumeの『ポリリズム』に決定!