Don't trust 全国紙

 というのが、今オフに広島サポが学んだことではないかと思う。とにかく全国紙が流す移籍情報はウソが多い。正確にはウソというより「代理人のリーク」というべきだろうが、何にしても実際に交渉を行ったわけでもなく、正式オファーがあったわけでもないのに「どこそこが〜〜〜に興味」とか「〜〜をリストアップ」という書き出しで、さも交渉が開始したかのような印象を与える。一番ひどいのは言わずと知れた放置だが、他の新聞も似たようなものだ。
 北海道ニッカンスポーツなどは、12月15日の時点で「札幌が広島DF吉弘の獲得決定的に」という見出しで記事を作っており、「順調にいけば、来週中にも「札幌吉弘」が誕生する可能性が高い」とまで書いている。http://hokkaido.nikkansports.com/soccer/jleague/consadole/p-hc-tp0-20071215-295727.htmlしかし1月9日時点でもまだ契約は成立していない。もちろんこれから契約が成立する可能性はあり、そういった意味では完全なウソとはいえない。しかし記事における「来週中」には成立していないし、12月15日時点では「決定的」でもなかったということだ。

 全国紙は、普段チーム練習に顔を出さない記者が多い。チーム関係者と毎日顔をあわせ馴染みになっていれば、必然的に飛ばし記事は書きにくくなる。情報をもらえなくなってしまうし、心情的にもためらわれるからだ。しかし何かあったとき(例えばチームが降格したとき)にしか顔を出さない記者にとって、チームは「取材先」であっても「顔なじみ」ではない。また全国紙にとって地方チームは「取材させてやる」という関係のことが多い。よって好き勝手な記事が成立する、というわけである。

 一方、中国新聞のような地元メディアは、まず憶測で記事を書くことはない。顔なじみになることで批判の手が弱くなる、というウィークポイントはあるが、少なくとも地方紙に真っ赤なウソが載ることはない。賢明な広島サポは、中国新聞とTSSサンフレッチェ広島以外の情報源は基本的に信用しないほうが良いだろう。

 そして、その中国新聞に「ストヤノフとダバツ残留へ 高柳は750万円で合意」という記事が載った。http://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Sw200801090151.html高柳はもちろん、ストヤノフとダバツも残留で間違いないだろう。まあ、正直なところ3人とも出るとは思っていなかったため、この記事について特に感想はない。

 ただ、ダバツについては微妙な気持ちではある。負傷するまでの彼のパフォーマンスは、決して優れたものではなかった。ホーム大宮戦では右サイドからのクロスを空振りし、小林慶行に先制点を献上する原因となっている。左サイドのバックアッパーになれるとはいえ、助っ人外国人としての力量があるかは微妙なところだ。もっとも、彼の年俸は力量に比例してか抑え気味であるらしい。外国人枠も余っており、現時点では日本人選手を補強するのと同じ感覚で捉えればいいのかもしれない。

 同様に、前田俊介レンタル延長の記事についても大した感想はない。http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20080108-OHT1T00187.htm ネット上の広島サポには狂信的な前田俊介ファンがいるようで理解に苦しむが、現時点の前田は非常に使いにくい選手だ。守備をしないし、ボールが収まるわけではないし、現在はドリブルで相手をさくさく抜けるわけではない。大分でもレギュラーを取れたわけではないし、vs.大宮における決勝ゴールを挙げる活躍がなければ大分からも必要とされなかった可能性が高い。大分が完全移籍のオファーを出さなかったことが、前田への評価を表している。大分は前田に対して「レンタルでもう一年見てみよう」程度の評価しかしていない、ということだ。今後の伸びしろは否定しないが、このままのプレースタイルでは大成する見込みは低い。チームが彼を戻すことができなかったとしても、それは批判には値しない。前田が来シーズンの戦力として計算できるとは考えにくいからだ。計算できない選手を戻してもそれは補強とはいえない。

 今回はレンタル延長を選択したが、前田が広島に復帰するセンは薄くなったといわざるをえない。活躍すれば大分が完全移籍で獲得するだろうし、本人もそれを望むだろう。逆に活躍できなければ、そんな不確定な選手を復帰させる理由もない。選手とチームに「縁」というものがあるとすれば、前田と広島の縁はほぼ切れたといっていいだろう。残念ながら、広島サポは前田を諦め、平繁龍一に期待を掛けるべきなのかもしれない。