つま先で打て!

 最近のカネタツは冴えている。キレキレである。

http://wsp.sponichi.co.jp/column/archives/2006/12/post_624.html
>素晴らしいシュートを打てる選手は、同じぐらい、不格好なシュートを打たなければならない。打たなければ、一流のストライカーたりえることはできない。いわゆる「リトル・ゴール」をどれだけ稼げるか。高原のみならず、日本人ストライカーの未来はそこにかかっている。(スポーツライター


 まったく同感、と言っていい。イビチャ・オシムが日本代表監督就任した前後から金子達仁の様子がおかしかった(笑)が、ここにきて良質の、少なくとも一読に値するコラムを連発している。カネタツの文章にここまで興味をそそられたのは、実に1998年前後以来ではなかろうか。


 ところで、シュートを打つことには、いろいろな捉え方がある。一つは、攻撃を「終わらせる」ということ。そのものズバリ「フィニッシュ」と言うように、シュートは概念上「攻撃を終わらせるもの」である。少なくとも、ゴールラインを割る(得点になるかならないかは別として)ことで、それまで続いたパスの文脈は途切れる。シュートを打たない心理、「もっと良い形で」を考える心理は、「これまでの良い流れを消したくない」というフィニッシュの意識が強すぎるために起こる面もある。


 しかし、実際にはシュートは「フィニッシュ」でないことも多い。相手選手のブロックやGKのセービングにあってCKを獲得し、「コンティニュー」することが頻繁にある。


 一方でシュートは「ゴールへのパス」であるという。確かに、その考え方も誤りではない。「ゴールへのパス」と言われて反射的に思いつくのは、かの“悪童”ロマーリオ。彼のシュートは、すべてが「パス」であった。振り向きざまに強烈なシュートを叩き込んだり、遠巻きからミドルシュートを決めるという印象はそれほどない。それよりも、インサイドキックで正確に流し込んだり、トウでチョコンと押し込んだり、味方のパスをフリーで受けて「美味しく」頂いたりという印象が強い。


 しかしそれは、DFとGKとの駆け引きに勝利しているからこそ。いわばロマーリオのゴールは、孫子の『兵法』ではないが「勝利し、後に戦う」ように、勝利した後に流し込む「パス」なのである。


 さて、上記2つの概念を考えてみると、日本人FWは概してこの両者の考え方の悪い面を持っている傾向があると思う。つまり、「フィニッシュ(最後の攻撃)だから、パスするように正確に」ということだ。ここで、カネタツの文章をもう一つ引用したい。

ボールが足元に入りすぎる。タイミングが少しズレた。そんなとき、日本人ストライカーは万全の態勢に持ち替えようとする。見た目は悪くても強引にシュートを放ってしまう外国人選手との、決定的な違いがそこにある。


 今シーズンのJ1得点王を獲得した浦和のワシントン、G大阪のマグノアウベスは、ともにそういう傾向がある。良い体勢で受けるオフザボールの技術、シュート体勢にスムーズに持ち込めるオンザボールの技術はあるが、それ以上に不利な体勢でもシュートを打つ。特にマグノアウベスは、ミドルシュートも多い。ヒザ下の振りの早さ、筋力の違いも大きいかも知れないが、とにかくシュートを打つ。データで見ても一目瞭然だが、http://www.j-league.or.jp/data/2/?league=j1&genre=ranking シュート本数3桁を超えるのはいずれも外国人選手だ。同率4位である我那覇和樹に至っては、同僚のジュニーニョの半分以下。ジュニーニョよりゴールに近い位置にいるにも関わらず、である。


 シュートに持ち込めるかどうかはケースバイケースなので、数字だけで一概に「少ない」と判断するのは性急かもしれない。しかし、マグノアウベスの162本(1試合平均4本強!)が「多い」ことは一目瞭然である。パスでもフィニッシュでも構わないが、もう少しシュート本数を上げてほしいのは自然な要求だと思う。


 一つの解決策としては、「トウキックを使う」という意識をもう少し高めてはどうか。学校サッカーでは、概して「トウキックを多用しない」という意識がある。トウキックを禁止する指導があるわけではないだろうが、「トウキックよりもまずは正確に流し込め」と教えられるケースは多い。しかし、ペナルティエリア20メートル内で最も有効なシュートはトウキックだ。メリットはたくさんある。シュートモーションが小さいため、相手にコースを切られにくい。モーションの小ささの割に、強いボールが打てる。そして不規則な変化をすることが多く、GKにとって処理が難しいボールになることが多い。つまり「相手にとってイヤなシュート」になることが多いのだ。


 2002年W杯準決勝トルコ戦で、ブラジルのFWロナウドが見せたようなトウキック。4人のDFに囲まれながら、一瞬コースが空いたところをすかさず狙ってトウで蹴り、GKルスチュの反応を完全に欺いた。あるいは1996年欧州選手権グループリーグ・ルーマニア戦でブルガリアのFWストイチコフが見せた、GKをギリギリまで引き付けてみせたトウキック。GKに「ニアか、ファーか、それとも股下か?」と考えさせておいて、不規則なバウンドをつけて脇の下を破った。世界的な名手が、トウキックで試合を決めるケースは結構ある。


 ということで、結論は「つま先で打て!」である。インサイド、インフロントキックよりも打ちやすく、しかも強烈。現行のボール(+チームガイスト)なら、至近距離から無回転のボールを蹴ることも可能なはず。ぜひとも積極的に試してほしい。

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