JPFAが面白い。

 五輪代表の試合を録画失敗し、ちょっぴり途方にくれているKINDです。皆さん、こんにちは。


 いやあ、日本シリーズも何も関係なく、「単純に」録画を失敗しました(明日の日付で録画した!)。久しぶりの経験で。笑っちゃいましたよ、マジで(笑)。何の作為もない、ちょっとした大失敗(どうですかこの形容矛盾)。まあ、そのうちにしんさんdorogubaさんが分析を書いてくださるだろうし、僕はそれを待つとします(姑息なプレッシャーです、ハイ笑)。


 ところで、唐突ですが、Jリーグ選手協会JPFA)のHPが面白いです。


 もちろん、「面白い」なんて言い方に語弊があるのは百も承知ですけどね。一般的な注目度は決して高いとはいえないJPFAですが、選手協会のHPだけあって選手のインタビューは豊富にあるし、その切り口はすべて「選手の権利をどう守るか」「社会人としてどう振舞っていくか」というもの。


 役員の名簿を見ても、選手協会会長に中山雅史、副会長に秋田豊秋葉忠宏宮本恒靖といったベテランに混じって、鈴木啓太石川直宏という若手の顔もある。特にこの若手2人は、将来的にJPFAを背負う期待を込めての抜擢だと思います。そういえば、ここに並んだプレーヤーは年齢だけでなく、どこかプレーも「大人びて」いるような気がしています。何となく、ですけど。僕が感じる日本の選手の「子供っぽさ」は、JPFAという「自分の権利を守る組織」に積極的に関わることで一つの解決を迎えるのではないか、と勝手に想像しています。


 ところで、今年におけるJPFA内の選手インタビューは「選手の報酬ベースを上げるためには」と「現行の移籍制度について」という2大テーマが軸になっています。今年度だけで34本ものインタビューが掲載されていますが、大勢を占める意見としては「報酬を上げるにはお客さんを呼ぶしかない」という意見、「移籍係数は見直してほしい(できれば廃止)」という意見だったように思います。


 以下は単なる雑感です。


 大卒ルーキーと高卒ルーキーがともに同じ「C契約(年俸上限480万。J1で450分、J2で900分出場で年俸上限なしのA契約締結可能)」で結ばれることに関して。「即戦力」と期待される大卒と、「育成」も視野に入れる高卒。プロとしての稼動年数が単純に「4年少ない」大卒と、「4年多い」高卒(もちろん比喩で、実情がこの通りとは限りませんが)。そう考えると、入団して即結果が求められる大卒は、最初からA契約でも良いのかも知れません。


 ただそうなると、大卒ルーキーへの「年俸提示」が始まり、クラブ間のバランスが壊れてしまう。また、例の「栄養費」名目の金銭授受など、モラルハザードが起きる可能性もある。そういうリスクを考慮すると、なかなか難しい部分がありそう。


 移籍係数制度。移籍係数とは、移籍金を算出する際に「年俸」に掛ける数字のこと。2005年2月に広島が仙台から佐藤寿人を獲得した際、広島は佐藤寿人の年俸2,000万円(推定)に移籍係数「8.0」という数字を掛けた「1億6,000万円」という満額の移籍金を仙台に支払っているといいます。詳しい数字はJFAの規約(こちら、pdf注意)の「6.移籍金算出基準)に記載がありますが、現行の「30歳以上は移籍係数なし」という制度は、2004年に選手会Jリーグと交渉して引き下げたという経緯があります。


 移籍係数のメリットとしては、優秀な若手選手の引抜きを防止するという効果があります。この制度では若手選手ほど係数が高く、満16歳以上満22歳未満は「10.0」です。この制度では、仮に年俸480万円(C契約)の有望株を引き抜こうとしても、4800万円の移籍金が必要となる。その選手が試合出場を果たし、A契約を勝ち取り年俸1,000万円となれば、移籍金は1億円ということで、簡単に引き抜ける金額ではないわけです。


 ところで、移籍係数制度や専属契約制度のない欧州では、EU圏内の国籍選手に関する移籍を自由化する『ボスマン判決』(1995年12月)以降「契約切れ=クラブの保有権消失=移籍金ゼロ」という考え方になり、金持ちクラブによる選手の乱獲得が始まりました。その結果、下部組織から育て上げた選手を高値で売却し、国際競争力を維持してきたアヤックスのようなクラブは骨抜きになった。外国人枠でかろうじて保たれていたビッグクラブとプロビンチャ(地方クラブ)の差は埋めがたいものとなり、ビッグクラブが「独走」でリーグ優勝を決めるケースが頻発するようになった。その結果、「資本を投下すればリーグ優勝を手にしやすい」状況が生まれ、ロマン・アブラモビッチ氏のような巨大資本家の参入を容易にし、オフシーズンに280億円もの移籍金を投じるチェルシーのようなクラブが現れるなど、クラブ間の財政規模にとてつもない格差が生じたわけです。


 日本に例を移すと、仮に移籍係数を完全に無くせば、資本力のある浦和や横浜FMなどのクラブが、こぞって地方クラブの有力選手を引き抜き、クラブ間格差は欧州ほどではなくとも広がる可能性はあります。セルジオ越後氏が主張する外国人枠の撤廃に関しても、欧州がすでに何十年も前から達成している『地域密着』(それは入場料収入という面においても)に到達しきれていないJリーグでは、やはりバランスを崩す要因となりかねない。現時点では、時期尚早としか言いようがないでしょう。


 ただ、J2でくすぶっている若手選手が、J1へもっと簡単に移籍できるような仕組みは必要かもしれません。現在J2でプレーする若手選手の中には、過去に年代別代表を経験した選手も多数存在します。彼らにレベルの高い舞台でのプレー機会を与えるためには、「J2に関しては移籍係数を軽減する」等の処置も検討してよいかも知れません。


 そのほかにも、「トライアウト」に関して、オファーの有無に関する連絡期日が定められていないこと。選手がB契約(専属交渉期間がなく、移籍金の上限が低い)を結べず、A契約を「結ばされる」ケースがあること。警告や退場による罰金制度は欧州のどこにもなく、現状では出場給・勝利給の獲得機会の喪失とあわせた「二重ペナルティ」になっていること。現行の契約制度を無くせば、「報酬は幾らでもいい、どうしてもプロになりたい」という希望を持つ選手への門戸を閉ざす可能性もあること。


 すぐにでも解決せねばならない「問題」から、「0か1か」では片付けらない「議論」まで、JPFAのページではしっかり勉強できます。選手の切実さと別に、「Jリーグってこうなってるのか」という知識を得るために、JPFAのHPは最適の資料を提供してくれています。とても「面白い」ので、興味がある方はぜひ。


http://j-leaguers.net/

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