ストライカーって何だ?


 いつも愛読しているdorogubaさんのコラムにて、ストライカーをどう育てるか、という記事に短いコメントがあった。個人的にはその後に続く外国人枠撤廃よりも、こちらの話を膨らませるほうに興味が向いたので、当該エントリーとはやや関係のないエントリーになるかも。そんときはゴメンなさい。

そもそもストライカーって?

 サッカーライター戸塚啓氏が紹介するジョバンニ・ブランキーニ氏の意見は、次のようなものだ。

http://www.ocn.ne.jp/sports/soccer/magazine/0482.html
「ストライカーを育てるための解決策としては、Jリーグのクラブが外国人FWを少なくすること。FWの選手をできるだけ買わないこと。もしJリーグがあらたな規則をつくって、2トップのうちひとりは日本人を使わなければいけないというルールができたら、私は4年後のワールドカップで日本のFWが成長していることを保証しますよ」


 この記事を読んで思ったのは「ストライカーって何だ?」ということ。どういうプレースタイルの選手を指すんでしょうね。久保竜彦高原直泰大黒将志巻誠一郎佐藤寿人、最近なら播戸竜二だって「ストライカー」と呼ばれてますが、プレースタイルはそれぞれ違ってます。ここに釜本邦茂三浦知良中山雅史を入れてしまうと、収拾がつかなくなりそう。


 ただ、ストライカーという形容に対してこれほど多くの選手があてはまるということは、やはりこの形容はアイマイなものなんでしょう。「ファンタジスタ」と同様に、結果論として付けられる称号。ファンタスティックなプレーをするからファンタジスタ点を取りまくるからストライカ、という結果論。


 だから、この記事が言いたいことも、要は「海外でも通用するFWをどう育てるか」、といういつもの問題なんでしょう。ところで、日本人FWが海外で通用しないなんて決め付けるのは早すぎるんじゃないかと思ったりします。

どんなプレースタイルが通用するのか


 再度書きますが、FWには多彩なプレースタイルがあります。また「海外」もいろいろなリーグがあります。スコットランドリーグのようにマークがユルユルなリーグもあるし、セリエAのように毎試合凸凹のピッチでドン引きのチーム同士が球蹴って削りあうリーグもある。プレミアリーグのように縦への展開がすさまじく早く、「考える早さ」と「物理的な速さ」の両面が要求されるタフなリーグもある。


 その中で、どういう選手を送り出したいのか。ドログバのようにバネがあり、反転が鬼のように早く、無理な体勢からでも強烈なシュートを放てるアフリカンな選手が良いのか。クローゼやインザーギのように、ほとんど中盤に関わらず、DFとの一瞬の駆け引きで点を取るタイプなのか。モリエンテスのようにポストプレーもつなぎもソツなくこなせ、フィニッシュにも絡めるオールラウンダーなのか。


 日本人に限って言えば、久保竜彦のようなアフリカンな選手は「異能」としかいえない。縦パス一本で相手を置き去りにするスピード、トップスピードでボールを正確に扱う技術、それが可能にする早めのルックアップ、味方を見つける視野の広さ、正確なタイミングと球質でパスを送る技術、態勢を崩しながらムリヤリアウトサイドでねじ込んでしまうフィニッシュの多彩さ、足首の柔らかさ、ハーフライン付近からでもシュートを枠に飛ばす内転筋の強さ……そういうモノは、トレーニングしてもなかなか身につかない。


 一方で、FWが身に着ける後天的な資質は多い。中盤の選手の「視界に入る」ポジショニング、スルーパスへのコース取り(すり抜けの方法)、コースに入ってきたDFをどう排除するか、DFの視界から消えるポジショニング、飛び出すタイミング、いつどういう早さでどこに飛び込んでいくのか、相手を背負いながらどの位置にボールを置くか、どのタイミングで反転するか……それらは後天的な技術であり、目的を持ったトレーニングによって習得できるもの。


 そうなると、すでに日本には「日本人らしく」「世界に通用する可能性があるFW」がいるのではないか。例えば大黒将志であり、播戸竜二であり、佐藤寿人だったりするのではないかと。

「日本人らしい」FWたち


 彼らは上背に恵まれない分、DFとの駆け引きとポジショニング、飛び出すタイミングで勝負する。中盤のつなぎに殆ど顔を出さず、ゴールに向かってプレーすることが多い。そのため、相方にはポストプレーができ、キープ力のある選手がいないと試合から「消え」がちになる。


 しかし彼らが自身の才能と活かし方を認識し、自身のスタイルが活かせるリーグ、適切な「相方」がいるチームにいけるのであれば、やっていける可能性はあるのでは。彼らは、日本人のストロングポイントである「中距離での敏捷性」を武器にし、ウィークポイントである「当たりの弱さ」をプレーに関与させない。それは、先ほど挙げたインザーギやクローゼといった選手たちの特性と共通する。


 そう考えると、今日本に必要なのは、「世界に通用するFWとは何か」を議論することではなく、「日本人らしいFWに合ったチームを探すこと」ではないのか、と思ったり。「タイミングさえ合えば、上背は関係ない」というのはラウール・ゴンザレスの言葉であり、サッカーの真理でもあるわけですから。


 ただねぇ……「適切な」移籍先探す選択肢または余裕なんて「ない」のも実情なんすよね……トホホ。



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