第26節磐田vs.G大阪分析(上)

磐田はいかにG大阪を下したか?

 アジウソン監督になって「相手をカタにはめる」サッカーで新潟から7点を強奪したり、川崎から4点を奪ったりとここ4試合で3勝、14得点6失点という結果を残している8位磐田。川崎戦についてはこちらのエントリーで触れたが、川崎の我那覇和樹ジュニーニョ今野章という3人のアタッカーに対し、3バックに変更して中央を徹底的に固め、ボールを奪うと右サイドに張った太田吉彰を基点に素早いカウンターを仕掛けた。この試合でも2位G大阪から勝利を収めたわけだが、いったいどういう形で勝利まで持ち込んだのか、その過程を知りたかった


 一方の2位G大阪は、前節甲府戦で3点を先取される展開。詳しくはこちらのエントリーにあるが、甲府は前線の3枚にオフェンシブハーフ2人という常時3人から5人の人数が攻撃に絡んでくる。一度ペースを握られると、それを押し返すのはG大阪とて難しい。まして、甲府は「90分ペースを持たそう」なんて考えていない。後半にガス欠を起こすまで、馬車馬のように走り続ける。そういうチームに対抗するためには、どうしても後ろのケアを考えざるを得ない。ダブルボランチ明神智和橋本英郎という守備的な2選手であることもあり、G大阪は序盤から前線の孤立を強いられた。


 スカパー!解説の金田氏が「エンジンが掛かるのが遅かった」と仰っていたが、ペースとは「先手を取るか取られるか」。そういった意味で、この試合はG大阪が「いかにペースを握るか」に注目が集まった。

“意外な”先制点


 先制点は、“意外にも”磐田が奪った。7分、磐田最初の攻め。カウンターからファブリシオ、服部と繋いで左サイドからクロス。宮本がクリアしたボールを拾った太田吉彰が、右サイドから「一山越えて落ちる」精度の高いクロス。これを、中央でフリーになったカレン・ロバートが頭で押し込み先制点を挙げた。


 まったく意外な展開だった。序盤からペースを握ったのは、明らかにG大阪だったからだ。確かにこのシーンはDFラインが引きすぎ、ファブリシオ、左サイドの服部、右サイドの太田をいずれもフリーにしている。しかしミスらしいミスはこのシーンだけ。序盤に関しては、ほぼスコアと内容が一致しない典型的な試合といえた。その要因は、G大阪が「先手」を取ったことにある。


 試合開始から、G大阪は前線から激しいプレッシング。DFラインをハーフライン付近まで高く押し上げ、マグノ・アウベス播戸竜二二川孝広らがかなり深い位置までDFラインを追い込みにきた。このプレッシングによって磐田は完全に面食らい、危険な位置で次々とボールを失いピンチに陥る。
 
 1分、G大阪前田雅文のパスを播戸がスルーし二川がシュート。2分には明神が高い位置でカットしマグノ、二川とつなぎ、こぼれ球を山口智がシュート。3分には左サイドでキープした播戸がカットインして素早く右足を振り抜き、GK川口能活を脅かした。


 1点を奪われた後も、G大阪の優勢は変わらない。11分には左サイドで二川がヒールで残したボールを遠藤がつなぎマグノ・アウベスがポスト、落としたボールを再び二川が拾ってスルーパス。これを遠藤がエリア左サイドでフリーで受け、左足シュートを放つが惜しくも外れる。


 ジュビロは、この強烈な圧力を受け、完全に受身に立たされた。DFラインが引き気味になることでボランチが後ろに引っ張られる。さらに前線の選手たちにも「中央を空けたくない」という意識が植え付けられ、プレッシャーに行かなくなる。いわゆる「アリバイディフェンス」。この状況に乗じたG大阪の播戸、マグノ・アウベス、遠藤、二川といった選手たちは、サイドで、中央で、次々と基点を作り、面白いようにチャンスを量産した。甲府戦で相手に先手を取られた教訓が、活かされていたように思う

「リードを思い出した」磐田


 ただ、G大阪は攻勢を掛けた時間に点を取れなかったことが響いた。磐田が、徐々にG大阪のプレスに慣れていったからだ。30分、磐田は左サイドでクサビを受けた太田が、鋭い反転で前田をかわし、そのままペナルティーエリアまで持ち込んで右足シュート。ボールは惜しくもゴールを横切って外れたが、このシーンをきっかけに磐田は徐々に落ち着きを取り戻し始める。「リードしているのは自分たち」ということを思い出したのか、磐田はDFラインでしっかりとボールを回してチャンスを伺うようになった。


 そして37分、2点目はまたしても磐田が奪った。DFラインの田中誠が大きくサイドチェンジ。左サイドで受けた服部が、縦に走るカレンへ。カレンはコーナーフラッグ付近からマイナスのクロスをセンターサークルに送ると、走り込んだファブリシオがシュート態勢に。このモーションにシジクレイ宮本恒靖が引っかかった一瞬を狙い、ファブリシオはすかさずエリア内で一瞬フリーになった上田康太へ。上田はゴールに背を向けた状態から身体をひねり、右足でループ気味のシュートを放ちGK藤ヶ谷を破った。結局、このまま前半は磐田が2点リードして終わった。


 磐田の得点は、ともにサイドで基点を作ってから。カレン、太田というサイドアタッカーがいる以上、磐田はボールを奪って素早くサイドに展開し、G大阪を横に揺さぶればペースを握り返せたはず。それをさせなかったのはG大阪のプレッシングと中央突破なのだが、だからこそG大阪は1点を奪いたかった。「流れがあるうちに1点を奪う」ことの重要性を感じさせる前半といえた

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