J1第25節京都vs.浦和分析

スーパーサッカー試合速報
京都 vs 浦和:ブッフバルト監督(浦和)記者会見コメント
京都 vs 浦和:柱谷幸一監督(京都)記者会見コメント
京都 vs 浦和:試合終了後の各選手コメント
以上J's GOALより


●浦和戦で心がけること


 浦和戦で心がけることとは何か。何といっても「先制点を与えないこと」だと思う。先制した試合の勝率が94.1%というとんでもない数字を残している以上、もはや浦和戦におけるマナーともいえるべきものだ(参考までに、京都の先制時の勝率は44.4%)。


 引いてブロックを作って相手の攻撃を受け止め、相手のDFラインとボランチの間に田中達也、ワシントン(今日は欠場)、ポンテ、山田暢久らを置き、低い位置で奪って闘莉王から縦に早いカウンター、あるいは三都主アレサンドロを使ってサイドに基点を作って攻めるのが大きなパターン。


 カウンターが成功しない場合、DFラインと鈴木啓太を経由しながら、ショートパスでサイドを変えてポゼッションを握って相手を押し包み、中央突破でファウルをもらったりサイドからワシントンに放り込んでこぼれ球を狙ったりするのがもう一つのパターン。


 単純なリアクションサッカーではない。とはいえ、リスキーにDFラインを押し上げて高い位置でコンパクトフィールドを作るものでもない。コンパクトになるのは、セットプレーの流れやカウンター崩れなどの「意図せずした形」が多い。個人の力に大変優れながら、同時に穴が開きにくいサッカーをやり、意図せずしてポゼッションを握るという点でプレミアリーグの雄チェルシーと共通点がある(今シーズンからワイドにアタッカーを置かなくなったことで、より似通ってきたのではないだろうか(未確認))。


 そういう相手に対しては、過剰な恐れは抱いてはならない。ただ、「先制点を奪われない」ことは、他チームに比べて非常に重要となる。カウンターからセットプレーを奪われれば、意図しようがしまいが大ピンチを招く。そのときに重要なのはマーキングであり、予測であり、人を捕まえることであり、「絶対に点を与えない」という強い意志である。その意志は、サッカーでは例えば「最後まで体を寄せる」という行為に繋がる。精神論ではなく、技術論である。


 ここまでこの話を引っ張ったということ。それは、当然ながら京都が「できていなかった」からにほかならない。

●一度の猶予


 序盤こそ浦和のアプローチが遅く、京都は相手陣内深くに侵入しチャンスを幾つか作ることができた。11分には田原豊ポストプレーから中山博貴がクロスを入れ、こぼれ球を至近距離から渡邉大剛が蹴り込もうとするなど、チャンスの目はあった。一方の浦和は動きがやや鈍く、個人能力とカウンターから打開をするだけの展開でしかなかった。


 しかし、先にある説明のとおり、浦和相手に「展開」や「流れ」などはあまり重要ではない。偶発的な形からでもチャンスを作る個の能力がある以上、常にBE ALERTの意識を持たねばならない。


 だが、京都はその意識をあまりにも早く手放した。14分、山田暢久の蹴った左CKは、フワリとした弾道を描きファーポストの闘莉王の下へ。ファーポストにはDFが2枚いたが、いずれも闘莉王に体を付けておらず、あっさりと頭で押し込まれてしまった。セットプレーとはいえ、あまりに淡白な対応であった。


 先制点を奪われて非常に苦しくなった京都。しかし、京都には一度だけチャンスがもたらされた。2分後の16分、斉藤大介の右クロスを田原が闘莉王に競り勝って落とすと、バイタルエリアに走りこんだ中山がダイレクトで一閃。ボールはGK山岸範宏の左を抜け、ネットを揺さぶった。斉藤の展開から一度もボールが接地しない、ハイレベルな攻撃だった。


●「締め直」せなかった京都


 このゴールで一旦は追いついた京都。もう一度「締めなおす」チャンスは、できた。しかし、京都はまた「繰り返して」しまう。
 
 22分、三都主のクロスをDF登尾顕徳がクリア。しかし、このボールが、ファーサイドペナルティーエリアやや外に詰めていた平川忠亮の足元にこぼれる。この時点で、平川はノーマーク。しかし目の前にはボールに競った登尾ともう1枚の選手がおり、直ちにコースを消しに行けば間に合うタイミングだった。


 しかし実際は、彼らはアタックに行かず、ボールを「見て」しまう。彼らの一瞬の躊躇は、「そんな高い位置に逆サイドハーフがいるの?」という驚きによって生まれたのかもしれない。だがそんな思惑とは関係なく、平川はボールの落ち際を右足インステップで振り抜き、GK西村弘司の反応領域の外にあるゴール右上隅へドライブシュートを沈めた。


 その後の試合展開は、それほど記憶にない。「記憶に残らなかった」というほうが正しい。覚えているのは、京都の不甲斐ないシーンばかり。40分に不用意な形でボールロストした京都が、山田に前を向かれてカウンターを受けた。この時点で、浦和の選手は中央に山田、前線に田中達也、右サイドにポンテ。一方、京都の選手は角田、登尾、手島の3人が残っており、状況的には数的同数。アタックには行けずともディレイは可能であった。


 だが現実には、山田へのファーストプレスに誰もいかない。ようやく行ったところで、薄くなった右サイドに通され、ポンテをほぼフリーにする。ポンテに対し遅れ気味にDFが付くが、その選手もクロスを妨害するでもなく、「ただ前に立つ」だけ。ポンテはルックアップし、タイミングを計り、余裕を持ってニアポストにクロス。このボールを、恐らくポンテとアイコンタクトする暇さえあっただろう田中達也が頭で押し込んだ。1−3。浦和はこのスコアになってから、今シーズン一度も負けていない。事実上、試合はここで終わったも同然だった。


●まったりとした惨敗


 それでも、ハーフタイムに巻き直すチャンスはまだあったかもしれない。だが京都は、46分に縦パス1本で山田に独走を許し1−4とされてしまう。その後、試合はほぼ浦和の戦力テストと、京都の選手の散発的な活躍のみに終始した。


 浦和は55分、平川に代えて永井雄一郎を投入し右ウイングに固定。カウンター時のプラットホームに指定し、次々と縦パスを送り込んだ。永井はそれに応え、得意のドリブル突破でチャンスを何度か演出した。


 さらに70分、浦和は三都主に代えて相馬崇人を投入。両サイドにドリブラーを配置する実験的な布陣を試みた。相馬はイキイキとしたドリブルを繰り返し、83分には美尾をドリブルでかわしてシュート。ボールは、カバーに入った、というよりは「無意識に反応した」ような形で手島和希の足に当たり、コースが変わってGK西村の逆を突いた。1−5。これが最終スコアとなった。


 京都は、75分から投入された美尾敦が、鋭いドリブル突破からミドルシュートを放つなどした。だが、大きくリードを許されているチームが持つ反骨心、人数を掛けリスクを賭ける攻撃は最後まで見られないまま。「まったり」としたまま、試合はどちらが負けたのかよく分からない雰囲気で終わった。


 極めて下位チームらしい負け方、といえた。正直なところ、広島サポとしては「ホッとした」と同時に「がっかり」というところだ。広島がG大阪や浦和、川崎に対して食らいつかんばかりの気迫で臨んでいるのに、残留争いのライバルである(はずの)京都に、何か「もう入れ替え戦でいいや」という空気を感じたからである。


 言い過ぎている点があるなら、申し訳ない。だが、広島サポにとっても残念な試合だったということは、京都の選手にとって重く受け止めて頂きたい。浦和に負けることを、悔しいと思って欲しい。君たちは、まだJ1のチームだろう?

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