千葉vs.川崎 分析[上](ナビスコ杯準決勝2nd)


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2006_ナビスコカップ準決勝第2戦・・またまた、ほんのちょっとしたことの改善・・(千葉vsフロンターレ、3-2)・・(2006年9月20日、水曜日)(湯浅健二)
折れるな、勇介(中坊コラム)

-サッカーの不条理を感じさせる一戦


 前回の対戦では、川崎のホームで2−2の引き分け。ただ、終了間際にストヤノフ佐原秀樹が小競り合いを起こし、そこに千葉のGK立石も乱闘に加わるなど、非常に後味の悪い展開となった。“遺恨試合”という言い方はあまり使いたくないが、それでも前回の対戦を見たものには、何らかの“波乱の予感”を感じさせるものがあったに違いない。そしてそれは、結果的に試合終了のホイッスル間際に、不当な形かどうかはともかく起こってしまった。


-千葉、電光石火の2得点


 前半は、千葉の圧倒的な展開で幕を開けた。攻守における切り替えの早さ、運動量の豊富さで川崎を上回る。そして千葉は前半3分、いきなり先制点を奪う。

 相手CKのこぼれ球から素早い展開でカウンターを仕掛けた千葉は、右サイドでボールを受けたクルプニコビッチが中央の羽生直剛にグラウンダーパス。このボールを羽生がスルーすると、トップの位置に上がった坂本將貴がワンタッチで後方に戻し、左サイドを駆け上がった巻誠一郎に渡す。巻はこのボールをやはりワンタッチで中央の羽生に戻すと、羽生はダイレクトで中央へスルーパス。このボールで抜け出した坂本が、GK相澤貴志との1対1を制し落ち着いてボールを流し込んだ。

 このゴールは、「ワンタッチ・ツータッチのパス回し」「素早い攻守の切り替え」そして「近い選手が必要なポジションを取る」という千葉のポジションレス・サッカーの真骨頂が現れた。ゴールを決めた坂本のポジションは、本来右サイドである。CKからのカウンターということで、川崎は当然ながら戻りながらの守備を強いられる。その状況下で、4人の選手がポジションを変えながら、ワンタッチ・ツータッチで素早いパスを回してくる。対処しようと思っても、仕切れるものではない。まさに電光石火といっていい、千葉の先制点だった。

 このゴールでホーム・フクダ電子アリーナの観客を完全に味方につけた千葉は、勢いに乗って川崎を攻め立てる。川崎は早い時間に先制されたショックに加え、千葉の戻りがすさまじく早いこともあり、攻め手を見出せない。そして前半11分、千葉は早くも追加点を奪う。

 川崎ペナルティーエリア右でボールを受けたクルプニが、サポートに入ってきた阿部勇樹にバックパス。阿部は中央をルックアップすると、ファーポストに向かって鋭く曲がり落ちるクロスボールを供給。これを、左サイドから猛然と走りこんできた山岸智が右足で押し込み、追加点を挙げた。サイドで作って逆サイドにワンタッチで出したこと、中央で巻がニアサイドに動いて山岸のスペースを作ったこと、そして「ここに出てくる!」と信じて動き出した山岸の迷いなき動き出し、すべてが折り重なって生まれたゴールであった。


-「2-0」の怖さ


 千葉はボールを失えば素早く全員が帰陣してスペースを消し、我那覇和樹ジュニーニョの2トップに対して斎藤大輔水本裕貴が付き、ストヤノフが余る形でガッチリとマンマーク。トップ下のマギヌン佐藤勇人か阿部が見つつ、攻撃のギアである中村憲剛、突破力あるサイドハーフのマルコン、森勇介に対しても近い選手がマークを怠らない。その上で2点リードを奪ったことで、千葉はオンプレーでの主導権を完全に掌握した。

 こうなると川崎には、セットプレーやカウンターしか攻め手がない。しかし川崎はもう1人のダイナモである谷口博之を出場停止で欠き、中盤の構成力が低下。攻め手を見出そうにもミスが目立ち、30分過ぎにはストヤノフと佐原が小競り合いを起こすなど、イライラが目立ちはじめる。決定機は前半24分に中村のFKから佐原がフリーでヘッドを放ったシーン、前半37分にジュニーニョの縦パスから我那覇が千葉GK岡本昌弘と1対1になったシーンぐらい。前半は、完全に千葉のゲームで終わった。

 しかし、サッカーでは「2−0」という点差ほど怖いものはない。千葉は前半、何度か3点目を奪うチャンスもあった。だが、千葉はそこで決め切れなかった。一方、川崎は前半30分過ぎから我那覇ジュニーニョが引いてボールをもらい、中盤でボールを落ち着かせるようになった。これにより、いろいろなメリットが生まれた。まず、中盤からの展開を1人で担っていた中村への負担が軽くなった。またガッチリマークしていた2トップが下がったために、引き気味にゾーンを敷いた千葉は人数が余り気味になり、中盤から飛び出してくる選手を誰がマークするのかがあいまいになった。前述の37分のシーンは、その布石といってもよかった。


 このコラムは、こちらhttp://d.hatena.ne.jp/KIND/20060922/p5に続きます。

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