J1第23節浦和vs.広島(2●1)

http://www.tbs.co.jp/supers/game/20060916_3998.html
サンフレッチェ広島のニュース | 中国新聞アルファ
「J」みどころ
http://www.saitama-np.co.jp/news/reds/frame.html

 勝てた試合だった。悔しいという言葉しかない。

 広島の3バックおよび両サイドは、極めて集中していた。前節の名古屋戦同様にゾーンを深めに取り、相手にスペースを与えなかった。さらにこの日は、中盤の動きの質量ともに抜群。森崎浩司柏木陽介青山敏弘は攻守にハードワークをこなし、恐るべきキープ力を発揮したウェズレイをうまくサポートし、サイドへ有効な形でボールを供給できていた。前線の守備に関しても、特に佐藤寿人は前線から何度も中盤に下り、ボールホルダーに執拗なマークを繰り返した。

 また、戦い方そのものにも戦略性を感じた。前半の序盤、左CBダバツと右CB森崎和幸が相手最終ラインの裏に続けざまにロングフィードを入れたシーンがあった。浦和のDFラインは当然下がってボールを処理したわけだが、これにより佐藤寿人ウェズレイのスピードを警戒していた彼らには「裏に来るぞ」というメッセージを与えることとなった。結果、浦和の押し上げはうまくいかず、2トップと中盤の距離は離れ、足元でボールを回す展開が増えた。彼らの運動量そのものの問題もあるが、広島が中盤で主導権を握れた布石となったのは、前半に裏に放り込んだ幾つかのロングフィードにあったと思う。

 全体として、名古屋戦よりもはるかにアグレッシブな攻守ができたといえる。優勝争いをする相手にこの内容で戦えたことは、結果を別にしても誇って良いだろう。

 もっとも、サッカーは相手あってのもの。浦和の不出来に助けられた面は大きい。浦和はワシントンと鈴木啓太を負傷で、さらに万全でないポンテをベンチに置いた。そのため、浦和はハッキリとした3-5-2を敷き、2トップに永井雄一郎田中達也、トップ下に小野伸二を置いた。

 戦前の予想では「スピード系の2トップにかきまわされるのでは」という懸念があった。だが、結果的には杞憂に終わった。スターターの3人が輝いたのは、序盤に小野が平川忠亮にスルーパスを送ったシーンのみ。2トップは永井が主に中央に張り、田中がその周囲を動き回る形を取った。だが永井は田中と同様、本来はサイドでボールをもらってこそ生きる選手。実際、永井が中央でクサビを受けて展開するシーンは皆無に近かった。

 その機能不全に輪をかけたのが、トップ下の小野だった。トップ下として本来は2トップを追い越す動きが求められるのだが、動きの質量ともに物足りない。早すぎるタイミングで裏に要求して相手DFラインと“同化”してみたり、「ここぞ」というタイミングで足を止めていたり。俗に「試合から消える」という言葉があるが、効果的な動きの少なかった小野はほとんどの時間で“消えて”いた。ボールを持てば何かをするが、その間に味方のリズムが止まり、スペースを消した広島にとっては与し易いことこの上なかった。

 前半の浦和は、「まとも」ではなかった。もし僕がブッフバルトなら、田中と組む2トップは空中戦に強い黒部光昭に、トップ下には運動量の多い山田暢久を置く。広島のCBが空中戦に弱いことは明らかだし、トップ下に動き回る選手がいれば、青山はそうそう上がっていけないはずだからだ。実際、決勝点に絡んだのはその山田だった。ウェズレイのパスをカットされたシーンから右サイドを崩され、三都主アレサンドロのGKとDFの間を横切る精密なクロスを大外から回り込んだ山田が押し込んだものだった。仮定の話をするのは簡単だが、最初からこの布陣でこられていれば、広島はさらに苦戦を強いられたかもしれない。

 それだけに、広島は2点目を奪えなかったことが悔やまれる。35分の田中マルクス闘莉王のロングシュート、39分にウェズレイショートコーナーから意表をついてニアサイドに叩き込んだミドルシュートは、ともにスーパーとしか形容できないもの。完全なる個人技であり、ゲームの流れには関係なかった。広島はそれ以外のシーンでしっかりとFWにクサビを入れ、素早くサポートをし、何度もサイドを破り、ラストパスまで持ち込むシーンを何度も作っていた。それだけに、少しのミス、アイデアの不足、タイミングのロス、そして運のなさが悔やまれる。

 今後に向けて、広島の展望は決して暗くない。浦和相手に互角以上の内容を残したことは、選手たちの胸に何らかの自信をもたらすはず。しかし願わくば、次節は勝ち点とともにあってほしい。広島がリーグ残留ぎりぎりである15位に位置すること、内容よりも結果が重要であることを忘れてはならない。


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