J1第22節広島vs.名古屋(0△0)

http://www.j-league.or.jp/SS/jpn/j1f/200601000122102_W0201_J.html
サンフレッチェ広島のニュース | 中国新聞アルファ

 ストレスの溜まる試合だった。シュート数こそ記録上は互角だが、広島の枠内シュート数はゼロだったのではあるまいか。フル代表としてアジアカップ予選に出場した佐藤寿人駒野友一のコンディション不良は仕方ないとはいえ、ホームにも関わらず全くもってスッキリしない試合だった。

 原因は幾つかあるが、やはり最終ラインが低すぎることが最も大きい。

 この日の広島は、かなりセーフティな守備を敷いていた。相手のボランチがハーフラインを越えてボールを持ち上がっても、森崎浩司青山敏弘柏木陽介はほとんどプレッシャーを掛けに行かない。DFラインはリトリートし、全体のゾーンはズルズルと後退する。ダバツ戸田和幸森崎和幸という3バックは、相手の枚数に関わらず常に全員が残る。以前のように、誰かが中盤を追い越して攻撃参加することはない。結果、局地的に数的優位を作れることもなく、相手のブロックを崩した攻撃はほぼ皆無だった。

 論理的に考えて、このセーフティなやり方は間違ってはいない。相手には杉本、中村、藤田というスペースを使うことに長けた選手がそろっており、こちらのDFラインはそれほどスピードがあるわけではない。実際、裏のスペースを突かれるシーンはほとんどなかった。前半19分過ぎ、横パスを奪われてカウンターとなり、キムから杉本へ縦パスを通されてあわやというシーンを作られた。だが、カウンターからピンチになったのはそれぐらいだった。

 ミハイロ・ペトロビッチ監督が就任し、攻撃的なサッカーを標榜してからしばらく、広島は非常に出入りの激しいチームとなった。W杯による中断明けから、五輪代表のための中断期間までの4試合で、広島は8得点9失点[※第13節名古屋戦(3○2)、第14節千葉戦(2●4)、第15節甲府戦(1●3)、第16節FC東京戦(2○0)]。それまでの12試合が14得点24失点だったから、平均得点が大幅に上がったことが分かる。ただ、そのうち無失点に抑えたのはFC東京戦のみ。さらに中断明けの第17節清水戦(1●2)、第18節大分戦(0●1)、第19節G大阪戦(2●3)では3連敗し、一時は降格圏内の16位京都に勝ち点1差まで詰め寄られた。3試合の内容は、3得点と得点が減っている一方で、失点は6と減っていない。

 これらの状況を踏まえれば、低めのDFラインを敷くのは致し方ないことである。実際、DFラインの高さを修正して臨んだ鹿島戦では2-0で勝ち、続く磐田戦でも2-1で勝っている。

 ただ、当然ながら攻撃に弊害は出る。DFラインが低ければ、それだけプレッシャーを掛ける位置が低くなる。必然、ボールを奪う位置が低くなり、苦し紛れのクリアも増え、攻撃の回数そのものが減る。たまに単発のプレスでボールを奪ってもFWとの距離が離れているため、クサビのボールは長くなり、フォローも遅くなる。必然、相手に読まれやすくなり、カットされやすくなり、攻撃が単発になりがちとなる。それをカバーするためには当然中盤の運動量が求められるわけだが、特にサイドハーフは尋常でない距離を走ることが要求される。左サイドハーフ服部公太はいつものように涼しい顔でとてつもない距離を走っていたが、さすがに2日前まで2300メートルの高地にいた駒野は苦しそうだった。
 
 このやり方では、こういう試合が続くことになるだろう。構造的にフォローに行きづらいシステムになっているわけだから、独力で打開できるスキルを持たない広島が攻め手を無くすことは当然である。

 ただ……だからといって、監督を批判するつもりはない。本来、これほど低いラインを敷くのであれば左CBはダバツでなく盛田だろうし、柏木ではなくベットでも良いはず。だけど、そうしないということは、やはり理想の形はあるけれども、妥協をした結果ということ。若手中心に切り替えたメンバーを再び元に戻すということは、理想の追求そのものを捨てるということになる。チーム作りの一貫性を考えれば、それはできない相談だろう。現状では、このメンバーで、このDFラインで何とかするしかないのである。
 
 キーマンは、やはり戸田になるだろう。基本的には低めの位置を取るが、リスクヘッジが取れるときは思い切って押し上げ、コンパクトなゾーンを作る。そうなったとき、中盤の森崎浩、柏木、青山はウェズレイ、寿人との距離が近くなり、フォローに行きやすくなる。そのコンビネーションの精度を高めていけば、彼らの力量を考えればどんな守備陣でも崩すことは可能だ。

 極めて難しいサジ加減が要求されるが、どうにか頑張ってほしい。サポーターにも相変わらず(笑)忍耐が要求されるが、まあ今年はこういう年と腹をくくるしかないのだろう。