『DRAGONBALL EVOLUTION』観るぐらいなら『ヤッターマン』を観に行け!(ネタバレ注意)

 いやー、ってことで見てきましたよ『DRAGONBALL EVOLUTION』!

 http://movies.foxjapan.com/dragonball/


※注:悟空とブルマ

 
 期待していたのは、「うはwwwwwテラ原作レイプwwwww」「悟空wwwwアメリカ人wwwww」「亀仙人wwwwチョウ・ユンファ仕事選べwwww」という感想が1時間半ノンストップで出てくるような、思い切り笑える展開だったわけですよ。

 僕はmixi日記に「これ、要するに『絶対に笑ってはいけないドラゴンボールってことだよね?」という趣旨の、今思えば


 どうしようもなく甘い見通し


 を書いていて、要するになんだかんだいって「クソだクソだ言われてるけど、そのクソっぷりを笑うためならいいんじゃね?」と思ってチケットを購入したわけです。


 が、全然笑えない。


 笑えたのは一瞬。「ああ、悟空、アメリカ人なのね」「ああ、チチはハイスクールの友人なのね」みたいな感じで、なんだか知らないけどだんだん違和感がなくなってくる。だけど、その受容の過程について自問してみると、別にそれはデキがよいからとかでは一切なく、あまりに原作から乖離した作品なのに映画としても辻褄が合っていない、つまり脳内で「完全に別個の作品」として切り離す回路が出来上がったからだと思う。

 要は、この映画って結構マジメに作られてると思うんですよ。それなりに色々な要素が盛り込んであり、安易な勧善懲悪のセオリーにのっとった話には一応なっている。でも、ものすごい勢いで滑っている。


注:悟空

 どうも最近体調がよくなくて、まあ原因は花粉症の薬(『アレロック』)があまりに効き過ぎて寝ても起きてもずっと眠いという状況が続き、ひたすら生産性が下がりまくっている。

 なので、「この映画見てスッキリ笑い飛ばそう」とか思ってたんですが、そういう魂胆は良くないですね。マジメにやってる人を笑うなんてね。マジメにやった結果できたクソ映画は


 マジメにこき下ろすべきだ。


 いやこれね、ホントひどいよ。芸人に例えたらドランクドラゴン鈴木、邦画なら『大日本人』、邦楽ならファンキーモンキーベイビーズ、食い物なら冷めたオムレツ、国なら北朝鮮、携帯ならL●社製、政党なら公明党WindowsならMe&Vista、もういいやとにかくクソです。

 笑い飛ばそうにも、物語に没入しようにも、ラブコメに浸ろうにも、アクションに盛り上がろうにも、CGすげーと言おうにも、「原作の世界観が〜」と言おうにも、あらゆる方面に配慮しまくった結果どうしようもなく中途半端に陥っているわけです。つまり、


 完全無欠のクソ映画。


 以下、ものすごい勢いでネタバレ込みのdisりが開始されます。ご注意。


注:説明するのも面倒くさい

■誰が得するの???
⇒一言でいえばそういうこと。

 原作ファン向けなら、もっと原作に忠実な描写があり、設定があり、映画を見ながら「ああ、これは原作の新しい解釈を提示しているんだな」と納得せしめるのが目標になる。対して、非原作ファン・初見の人々向けならば、映画単独でも新しい設定が説得力を持つように準備すべきで。

 で、この映画がどちらなのかといえば、おそらく後者。なんせ孫悟空アメリカ人で、ハイスクールに通っているイジメられっ子って時点で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ベスト・キッド』などのアメリカ映画の類型なわけで。うだつのあがらない主人公が実は特殊能力を持っているヒーロー的な描写は、安易といえばあまりに安易にアメリカ的。


注:ブルマ

 なので、この映画は「原作を読んでいない」「アメリカ人向け」映画を全世界公開にしたブロックバスターと判断した。で、その観点に立つと、


 やっぱりクソ映画。


 あらゆるエピソードが中途半端。非原作ファン向けなのに、原作を知らなければ理解できない飛躍がとてつもなく多い。途中、この映画を見ていて「あれ、意外と普通に見れるぞ」と思ったが、少し考えると「オレ原作知ってるからじゃん!」と。要するに、原作ファンの脳内補完に依拠した、穴ボコだらけのストーリーなんですね。

 だから「誰得?」なわけです。原作ファンは『原作レイプ』の中途半端さについていけないし、非原作ファンは「原作がないと分からない!」と思って、やっぱりついていけない。誰が得をするのかといえば、せいぜいが版権収入を得る原作者ぐらいのものでしょう(さすがに、この映画で「原作に傷が付く」と考える人はほとんどいないと思うから)。


■疑問点がこんなに!
 ざっと思いついた疑問点は、次のようなものだった。

・なぜハイスクールの劣等性である悟空と、アイドル的な描写(も中途半端)をされているチチがくっつくのか。
・なぜ悟空は「虫の知らせ」を聞きつけて祖父の訃報を知ったのか。
・あっという間にイジメっ子をやっつけるのに、悟空がイジメられっ子な必然性は何か。
イジメっ子がその後いっさいストーリーに絡んでこないのはなぜか
・マイに銃を突きつけられる関めぐみはいったい何の役で、何の必然性があって起用されているのか。
関めぐみのエピソードがその後なんの伏線にもなっていないのはなぜか
・なぜブルマとヤムチャが特に理由もなくくっつくのか。
・なぜマイはピッコロと行動を共にしているのか。
・なぜピラフ・シュウ・プーアルらの役がマイに統合されているのか。
そもそもピッコロを復活させたのは誰なのか。
・なぜ中途半端に天下一武道会が挟まり、なぜその武道会に出ているのがチチなのか。
なぜ2000年前に暴れた大猿が悟空なのか(2000年前に地球にやってきた、という描写があったか?)。
そもそもなぜピッコロがドラゴンボールを集めているのか。
・なぜ亀仙人を軽く破ったピッコロが、亀仙人に軽く敗れた悟空に負けるのか。
・なぜ悟空があんなエロい設定なのか。
・そもそもなぜピッコロがラスボスなのか(全体の設定はレッドリボン軍以前だよ??)

 いや、このうち全部が説明されてないとは思いませんよ。たぶん、どっかで見落としてる伏線はある。なんせ、いっさい映画に引き込まれることがなく、途中から明らかにマジメに見る気をなくしていたので。

 それでも、大多数の部分はそうだと思う。ボールドをかけた部分は「物語を成立させるため」に重要な箇所であり、説明がないため「何のためにこのシーンがあるの?」という感想を禁じえないのだ。

■結論:
ヤッターマン』を見に行け!

⇒どうしようもなく中途半端。原作レイプをするなら徹底的にやるべきだったし、そうでないなら徹底的に忠実になるべきだった。

 そのいずれも突き抜けていないので、観客としては何を楽しみにして観ていいのかまったく分からない。エンドロールで浜崎あゆみの曲が流れてきた瞬間の虚脱感を何にたとえよう。

 どうせなら、チチ(ジェイミー・チャン)を中心としたエロ映画にすればよかったのだ。それこそ、『ヤッターマン』がフカキョンドロンジョのためだけに作られ、主役の2人など「いたの??」と思うぐらい、清清しいほどにフカキョンの乳をフォーカスしまくったように。つか、この映画で


 唯一よかったのはチチの乳である。


注:チチ

 

 ということでこの映画、鑑賞後に8, 000字ぐらいにわたって罵倒エントリーを書き連ねるつもりのブロガー諸兄にオススメです!!!