『GAME』全曲紹介(1)

 mixi日記に乗っけたやつの転載です。もっと直してから、と思ったんですが、別に公開してから修正してもいいか、と思い直したので上げます。

GAME(DVD付) 【初回限定盤】

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01.ポリリズム
02.plastic smile
03.GAME
04.Baby cruising Love
05.チョコレイト・ディスコ
06.マカロニ
07.セラミックガール
08.Take me Take me
09.シークレット シークレット
10.Butterfly
11.Twinkle Snow Powdery Snow
12.Puppy love

 以下、足りない頭をひねっての考察、または単なる妄想(笑)。

■01.ポリリズム

ポリリズム』でスタートさせた意味は、もちろん『ポリリズム』という曲がPerfumeでもっともポピュラーな曲であり、出世作であり、「挨拶代わりに相応しい曲だから」なのでしょう。

 テレビでしかこの曲を知らない人はおそらく、この曲が『ポリリズム』というタイトルをつけた所以であるポリループを知らないはずです。実際、とある雑誌のレビュアーは「ポリリズムもさらにクレイジーなアレンジ」と書いている。もちろん、実際にはアレンジは同じままです。ポリループを削られた、言うなれば「毒抜きされた」テレビエディットしか知らないからこその感想でしょう。新規ファンの大量流入を見据え、トップに持ってくることでインパクトがあると判断したのでは、と思います。

 が、さらにもう一つ解釈を進めると。この曲は、全曲を見渡すと「最初以外に置き場がない」という感想も覚えます。Perfumeの実験性を示す『ポリリズム』ですが、その曲を持ってすらこのアルバムの中に入ると「普通の曲」に聞こえるからです。

■02.plastic smile

 アルバム曲で最初に登場するのがこの曲です。サビ前のブレイクビーツと、Perfumeで恐らく初めてであろう「性描写を連想しうる歌詞」が出てきたことが、何より特筆すべきかと思います。

 曲調は「平和な」w4つ打ちに、印象的な「ah ah」「yeh yeh」という甘いコールが重なる。ライブでもすごく盛り上がる曲になりそうです。歌詞を読まないと、「普通に良い曲」で終わるでしょうし、それでも一向に構わないと思います。

 が、歌詞を読んでみると曲への印象が一変します。

 ah ah 僕のことを
 yeh yeh そんな目をして
 ah ah 見つめないで
 yeh yeh 何か外れた

 Perfumeのこれまでを考えると、非常に刺激的な歌詞です。もちろん別の解釈も可能でしょうが、素直に捉えるとこれは性的な意味を読み取らざるをえない。なんせ、次に続く歌詞でもこんなくだりがありますから。

 あぁ せっかくの時も
 あっさりしてるの
 もったいないでしょ
 あぁ ゆっくりとふたり
 過ごすのもいいけど
 味気ない 何か たぶん

 また、他の部分では『ほしいよもっと』なんてフレーズがあったりして。この歌詞に、「そういう意味」を感じないのはムリです。明らかに確信犯的です、この歌詞。

 Perfumeの3人が19歳という「いい年」になったことで、こうした際どい歌詞を歌わせようと考えたのでしょう。また、3人のコールもこれまでのような元気いっぱいの声ではなく、確信犯的なウィスパーボイスだったり。曲調だけ見ると平和ですが、すでに中田ヤスタカのたくらみは始まっています。

 で、序盤の大ヤマ、表題曲『GAME』につながります。

■03.GAME

 日本のアイドルポップス史、いやポップス史に残る名曲の一つでしょう。これをポップスと呼ぶのかどうか、その一点において評価が定まらないかも知れませんが、少なくとも現状のJ-POPにおいてこれほどまでに挑戦的な曲作りをしているアーティストは殆どいない。

 この曲で彷彿とさせられるのは、やはり日本で最も意欲的な音作りをしているユニットの一つ、僕の大好きなブンブンサテライツです。まさかアイドルの曲とブンブンを同列で語るとは思ってもみませんでしたが(笑)。

 先ごろの日記でも触れましたが、イントロでいきなり神経をかき乱すような轟音エレキベースが鳴り響き、ブレイクビーツを経て、これまた不穏なギターのカッティングが入る。フレンチ・エレクトロのJustice、ドイツのDigitalismなどが好んで用いるような、非常に攻撃的な音選びです。

 これまでのPerfumeの全曲をごぼう抜きにする、圧倒的な攻撃力を秘めた曲。『エレクトロ・ワールド』の破壊力を軽々と上回る、凄まじくプログレッシブなサウンド。歌詞もテクノ的な冷たさを感じさせる、『Play the game』『try the new world』という歌詞。ものすごく挑戦的で挑発的で攻撃的な音作りで、それゆえ多くの人々(過去の『スウィートドーナッツ』などの曲を慈しむ古参ファンも含む!)を振り落としかねない、極めて危険な曲です。

 が、この曲が真にすごいのは、ここまで分厚いサウンドを構築しながら、「単にカッコいい曲」に終わっていないことだと思います。Perfumeの3人のスウィートボイスが、アイドルポップスはおろかJ-POPの規格を悠々と飛び越していくこの曲に、ものすごい引力を与えてポップスへと着地させている。この曲で最も注目すべきは、前面に押し出された轟音ではなく、Perfumeの3人の「声」なのだと思います。

 この曲が証明するのは、中田ヤスタカがどれほど実験を重ねようとも「3人の声がある限りPerfumeはポップスとして着地する」ということ。それに気付いたとき、僕は「中田ヤスタカにとって、Perfumeは欠かせない存在になった」と結論付けました。

 中田ヤスタカが進化を続けることで、逆にPerfumeのボーカルの重要性が増す。なんとも逆説的で、面白い関係性だと思います。

 つづきはコチラhttp://d.hatena.ne.jp/KIND/20080420/p2