オシムと、スペシャリストと、ポリバレンスと(2)

モチはモチ屋!


 dorogubaさんトータルフットボールさん酩酊さんのところで三者三様のトータルフットボール論が行われていて、面白い。


 第三者的な感想を述べると、「トータルフットボール」への視線としてはdorogubaさんに賛成です。

http://doroguba.at.webry.info/200610/article_7.html
ただ、現状では私が良いと思うサッカーでは基本となるポジションがあり、基本的にはそのオリジナルのポジションで能力を最大限に発揮できると思ってますし、ポジションチェンジは当然しますが、それはあくまで「数的にも個人の力量的にも」リスクを冒すものであり、その危機を承知で実行するものであると思う次第です。


 この記述に、まったく同感です。


 この記述にそった例を出すと、例えば坪井慶介が右サイドを上がって、2シャドー右の佐藤寿人を追い越した。しかしボールは奪われ、そのまま坪井が2シャドー右に入り、佐藤寿人が右サイドハーフにの位置に入ったとする。で、再びボールを奪ったとき、カウンターから坪井が相手DFラインの裏に走る……いったい、誰がこのシーンで得点を期待するのか(笑)? 所詮どこまでいってもCBはCBだし、FWはFW。モチはモチ屋です。完全なるポジションレスサッカーは、絵に描いたモチだと思います。だから、選手は「本来のポジション」に戻るのが正解だと思う。

高さ対策はどうするのか?


「トータルフットボールの理想」がどうであるとかは、現実に即して語られるべき。「日本代表にとって最適かどうか」が問題。ガーナ戦に関しては急造DFラインでよくやったけれども、2シャドーを相手SBにマンマークでつける、マーカーに合わせて駒野や三都主が逆サイドまでついていくやり方は「相手に合わせ過ぎ」と感じるので、反対です。それがポリバレントだろうがトータルフットボールであろうが。


 もしあのやり方を良しとするなら、選手は常にオリジナルポジションより大小なりとも違う場所で守備をし、バランスを取り直すために腐心し、攻撃に切り替われば数的優位を作るために「走れ、走れ」となる。それでは結局走れなくなったら負ける。ポジションを崩すのは攻撃において数的優位を作るため、主導権を握るためであって、相手に主導権を渡すためではない


 僕はガーナ戦のチームより、田中マルクス闘莉王坪井慶介(まぁ坪井じゃなくても良いけど…)が真ん中にいて、そのカバーに鈴木啓太が入るほうが守備は堅いと思う。というのは、ガーナはヨコのスピードはあったけど、高さはなかった。ガーナ戦の布陣では、ハイボールを放り込まれた時にまったく跳ね返せなくなる。日本がこれまで抱え続けていた課題が露出し、ポリバレントもクソもなくなる。


 そして中東勢やオーストラリアが武器にするのは高さ。実際、昨年のドイツW杯アジア最終予選でも、アウエーでイランに奪われた決勝点はクロスに加地が対応し切れなかったことが原因でした。アジア予選を考えると、「ハイクロスへの対応」というファクターは無視できない。今回の親善試合にしても、ガーナを選んだことが成功といえるかどうか。あの手の戦いをしてくるチームは、アジア予選にはいないアジアカップに向けた対策として捉えるなら、当初予定されていたパラグアイやイランといった方が理にかなった相手だったのかもしれません

あせらず、じっくりと。


 まあ何にしても、もう少し待つべきでしょう。インド戦のメンバーはガーナ戦と同じで行くそうですが、じゃあこれが「トータルフットボール」や「ポリバレント」の証明なのか。今後闘莉王と坪井と加地は選ばれないのか。そんなことはないでしょう。単にガーナ戦の出来と日程と、インドなんて彼ら3人抜きでもやれるだろ、という話でしかない気がするんです。


 今後も、代表チームはJリーグ、ナビスコ、ACLやA3など日程に振り回され続けるでしょう。そこに海外組も加わってくればさらに日程は複雑になる。その中で「線」的な強化を行っていず、さらにオシムの言う「まずは相手がどう来るかだ」という言葉を加味すれば、少なくとも親善試合は「ずっとスペシャルチームが続く」とさえ思えてくる。


 しかし、目的はまず「W杯アジア予選をどう勝ち抜くか」。オシムがアジアの事情に精通しているかどうかは、まだ分からない。われわれは目先の試合に眼を奪われず、本来の目的に向けて正しい強化が行われているかどうかを、じっくりと見ていくことが必要ではないでしょうか。

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